LightroomのAIノイズ除去をApple Silicon Macで試す

普段使用しているPhotoshop・CameraRaw及びLightroomの先日のアップデートで主にカメラの高感度撮影の際のノイズを除去する機能「AIノイズ除去」が追加され、写真を趣味とする者としては試さずにはいられないということで、早速Lightroom Classicで試してみた。

MFTで発生する低感度シャドウノイズにも効果的?

今回AIノイズ除去のテストに使用した写真は「高感度ノイズが目立つ写真」ではなく、MFT(マイクロフォーサーズ)カメラで撮影し、Lightroomに読みこんで影(シャドウ)を持ち上げた所謂「低感度のシャドウノイズが目立つ写真」だ。

僕は普段、MFTのPanasonic Lumix GX7MK3かAPS-CのNikon Z-50を使用しているが、どちらのカメラでもISOを上げて高感度撮影することはまずなく、夜間でもISOは200に固定して撮影することがほとんだ。

その際に問題になるのがLumix GX7MK3のMFTのセンサーサイズの小ささによる低感度のシャドウノイズだ。低感度シャドウノイズはLightroomなどで影を持ち上げた際に目立ち、MFTの宿命とされている。APS-Cやフルサイズ機でも無論、低感度シャドウノイズは発生するがMFTは特に顕著で、夕日など強い逆光の写真でいつもシャドウノイズに悩まされる。

AIノイズ除去前
AIノイズ除去後

前置きが長くなったが「AIノイズ除去」を試した結果が上記画像となる。デフォルト設定から何も弄らずに適用量は50としている。元の写真はISO 200の20MP写真であるが、影(シャドウ)を思いっきり持ち上げたため、写真全体にわたって低感度シャドウノイズが目立つものだ。

画像をクリックすると拡大されるが、拡大しなくとも結果は一目瞭然で、アスファルトの部分や塀の部分などのノイズが綺麗に低減されている。

ただ、ノイズなら何でも除去するのかと思いきや、シーンによってはノイズ除去の効果が異なるようで、例えば下記写真のようにノイズ除去を実行してもさほどノイズが低減されない場合もあるようだ。

AIノイズ除去後

上記画像は先ほどの写真とほぼ同じシチュエーションで撮って影を持ち上げ、AIノイズ除去を施したものだが、ノイズ除去を行なってもマンションや家屋の外壁のノイズはほとんど除去されていない。

AIノイズ除去は当然ではあるが万能ではなく、あくまで補助的なものであり「AIノイズ除去があるからもうノイズを気にする必要はない」というものではない。

ただ、Lightroomデフォルトのノイズ除去機能より自然なノイズ除去が可能なのは確かであるため、今後撮影シーンに応じて適切に利用すれば役立ちそうだ。

Mac Studio(M1 Max 24コアGPU)の負荷・処理時間・ANEの使用率について

この「AIノイズ除去」機能であるが、GPUを酷使するらしく、RTX 3060のグラフィックボードを積んだマシンでも処理に10〜20秒ほどかかったとGIGAZINEには書かれていたが、Mac Studio(M1 Max 24コアGPU)で本記事に掲載した20MPの写真のノイズ除去の「予測時間」は10秒で、実際の処理にかかった時間もほぼ10秒であった。

他にも色々な写真でテストしたが、少なくとも20MPの写真の場合は処理にかかる予測時間は全て「10秒」であったため、このAIノイズ除去はApple Silicon(M1、M2)チップ向けに上手く最適化されているのかもしれない。

なお、「AI」という名前が付いている機能ではあるが、前述の通り主にGPUに負荷がかかる処理であり、例えばApple Silicon Macで実行してもM1、M2シリーズに搭載されている「Apple Neural Engine」を使用するわけではない。

AIノイズ除去実行中のM1 Maxチップの使用率。GPU使用率は99%だが、ANEは全く使用されていない

上記画像はLightroom ClassicでAIノイズ除去を実行中の「asitop(Apple Silicon CLIモニタリングツール)」の画像だが、GPUに99%の負荷がかかっているのに対して「ANE(Apple Neural Engine)」の使用率は0%だ。

ANEは機械学習に特化したApple Siliconの一機能であり、iPhone 8・iPhone XのA11 Bionicに初搭載されて以降、iPhoneやiPadではFace ID、カメラ、フォトグラフィスタイル、Siri、センターステージなど、様々な機能で活用されている、いわばApple Siliconの影の立役者だ。

ただ、Macにおいては依然としてANEが真価を発揮するシチュエーションというのは皆無であり、AIがこれだけ騒がれている中でMacではほとんどのアプリでANEが使用されないというのは勿体なく感じる(一応Final Cut ProでANEが使用されることもあるようなのだが、テストできる環境がない)。

まとめ

この「AIノイズ除去」機能については長期間テストしたわけではないので、僕の撮影スタイルにどれほどの恩恵があるのかはまだ何とも言えない。ただ、デフォルトのノイズ除去より優れていることは確かのため高感度時や低感度のシャドウノイズが目立つ写真では役立ちそうだ。

Lightroomのデフォルトのノイズ除去機能は適用量を上げすぎると塗り絵みたいな不自然な結果になってしまうことが多かったが、個人的な印象としてこのAIノイズ除去は適用量は初期値の50であれば不自然さは全くないため、撮影シーンに応じて適切に使用していきたい。