Apple Silicon Macにちょっと懸念していること

Mac Studio(M1 Max 32GB, 24 Core GPU, 1TB)を購入して1年以上経ったが、性能には全く不満はなく、Lightroomでの写真現像からDavinci Resolveでの動画編集まで難なくこなしてくれる万能マシンとして活躍している。

メモリだけは32GBではなく64GBにカスタマイズするべきだったと思うが、スワップしても動作がカクついたりするわけではないので特に気にしてない。

ただ、最近のApple M2やM2 Maxの性能を見ると確かにApple Silicon Macは低消費電力・低発熱ではあるが決して「高性能」というわけではないと考えている。

Apple M1の登場当初は競合の8コア16スレッドのCore i9(モバイル向け)を性能で上回り、なおかつとんでもなく低消費電力だったので業界を驚かせ、Macの売上高も過去最高となった。ただ、その後登場したApple M2シリーズはApple M1シリーズと比べて性能は微増であり、この頃には世間もApple M1登場当初の熱は冷めてきていた。

無論Apple Mシリーズと同等の性能でここまで消費電力が低いCPUはIntelにもAMDにもほぼ存在しない。Mac Studio M1 Maxは全10コアに負荷をかけても消費電力はSoC全体で48W程度だ(iStat Menus読み)。低消費電力とパフォーマンスの両立という点ではApple Mシリーズは素晴らしい。

Cinebench R23でM1 Maxの全CPUコアに負荷をかけている状態、SoC全体の消費電力は最高で48W程度

ただ、消費電力や発熱を度外視して絶対性能に目を向けるとApple Mシリーズは最新のAMD RyzenやIntelのCore i9プロセッサには及ばない。

Mac StudioのM1 Ultraバージョンは558,800円からという非常に高価なマシンであるが、Geekbench Browserを見るとIntelのRaptor Lake(13世代Coreシリーズ)のCore i9 13900Kのスコアに届かないことがわかる。そしてCore i9 13900Kは自作するのであれば単体で8万程度から購入可能だ。

Geekbench Browserでの13900Kを搭載したWindows PCのスコア
Max StudioやMBP、Mac miniのスコア。最上位モデルのMac Studio M1 UltraモデルでもCore i9に及ばない

GPUに関しても同様で現時点でApple MシリーズのGPUは競合であるAMDやNVIDIAのハイエンドGPUには及ばない性能となっている。

自作ではなくBTOであっても20万円以下でMac Studio M1 Ultraモデルを上回るCore i9 13900K搭載のWindows PCを手にすることができるため、単純にCPU・GPU性能を重視し、macOSに拘らないのであればWindows PCを買った方がいいとまで言える。

Windows PCを買った方が安いというのはIntel Macの時代からそうであったが、Apple Silicon Macの登場によってWindows PCとApple Silicon Macで良くも悪くも差が開いてしまったように思う。

もちろん、これはデスクトップPCの話であり、ノートPCとなるとApple Mシリーズの低消費電力・低発熱という特徴が活きてくるが、やはりそれでも性能・価格面ではWindows PCを越えられない状態となっている。

例えばCore i9 13700Hを搭載したノートPCであれば20万円程度から購入可能であり、性能はM1 Maxと同等か場合によってはそれを上回る。

僕が懸念しているのはApple Mシリーズの世代交代による性能向上が微増であり、IntelやAMDといった競合他社が追い上げてきていることだ。

あと数ヶ月すれば恐らくは新たなApple MシリーズであるApple M3が発表されると思うが、Apple M3も性能面で微増だった場合、パフォーマンスを求めるユーザーに訴求できるのか心配だ。

Intel Macの時代であれば価格は割高でも一般のWindows PCと同等のチップが搭載されたMacを購入可能だったが、今後もApple Mシリーズの性能向上が期待したほどではなかった場合、競合と比べて性能面での優位性が著しく落ちてしまうのではないか。

ただ、Apple Mシリーズには複数のビデオデコード/エンコードエンジンやANE(Apple Neural Engine)といった競合他社製品にはない機能も存在しているため、それらの機能を使用するアプリなどではまた別の話となる。

いずれにしろApple M3の性能向上がどうなるのか、近い将来の発表を期待しよう。