VA-11 Hall-A:Cyberpunk Bartender Action PS4版レビュー

先日購入した”VA-11 Hall-A”のPS4版をトロコン(トロフィーコンプリート)してクリアしたのでレビュー 。

先日の記事でも書いた通り本ゲームはベネズエラのインディーゲームスタジオ”Sukeban Games”が日本文化に大きな影響を受けて開発したテキストADVゲームだ。

一見すると国産ゲームに思えるが、ローカライズ以外日本スタッフは関わっておらず完全な洋ゲーである。

VA-11 Hall-Aとは主人公が働くバーの名前であり、読みはヴァルハラ。

内容としてはは80年代風のドット絵テキストADVゲームをベースに、プレイヤーは主人公の”ジル”を操作して客の要望するカクテルを作りながら、客や同僚と会話をして物語を進めていく、ゲーム性よりはストーリー性重視の作品である。

ストーリー性重視と言ってもミニゲームや買い物といったシステムもあり、ジルの部屋の内装を変えたり、BGMを購入してバーで流すといったテキストADV以外のゲームプレイ部分も割と充実している。

ゲームの舞台は207X年のグリッチシティと呼ばれる架空の街であり、この世界では科学技術が進んでいる一方、政府による監視や犯罪の増加といった問題を抱えており、いわゆるディストピアのような様相を呈している。

こうした”政府による監視が絶えず、治安が悪い街”という要素は開発スタジオの存在するベネズエラの現状が反映されている。

現実世界のベネズエラもハイパーインフレによる経済の崩壊、犯罪や暴動の頻発といった問題を抱えており、殺人発生率は世界第2位という極めて治安が悪い国だ。

そのような国で開発されたゲームだけあって、作品世界の社会問題や登場人物たちの抱える悩みもベネズエラの実情が色濃く表れている。

主人公のジルはそんなベネズエラの情勢が反映されたグリッチシティの場末のバー”VA-11 Hall-A”でバーテンダーとして働く、特別な能力や地位も持たない、バイセクシャルでシニカルな性格ではあるがこの世界では極一般的と言っていい女性(27歳)だ。

一方でバーに来る客や同僚は一癖も二癖もある人物であり、ジルはそんな風変わりな人間たち(時にはアンドロイドなど人間以外)とのコミュニケーションを通して、自分の抱える悩みや問題と向き合っていくことになる。

”客の要望するカクテルを臨機応変に提供する”というのが、ゲームプレイの醍醐味ではあるが、それはあくまで客との会話や物語を進める上での一要素であり、このゲームの核となるのは主人公のジルと、それを取り巻く人たちの生き様を描いている、という点だと思う。

ジルは過去にあるトラウマを抱え、自分の現状や将来についても漠然とした不安を持っている。

この作品は、そんな過去のトラウマや自分の現状・将来に悩む女性がバーテンダーとして働きながら、客や同僚たちと会話をして行く中で時には客の悩みを聞いてそれを解決し、またある時は自分の悩みを聞いてもらい、葛藤しながら、この腐敗した世界の中で前へと進んでいく物語だ。

この作品のストーリーは主人公が巨大な悪に立ち向かったり、腐敗した世界を変えるといった壮大な話を描いているのではなく、一人の悩める大人の女性が一歩ずつ前進することに焦点を当てている。

そんな我々にも通じる悩みを抱える主人公だからこそ、プレイヤーはジルの人生を少しでも良くしてあげたい、というある種の感情移入を覚えるのだ。

こういった主人公への共感の抱かせ方がこのゲームの一番すごいところではないか、と僕は感じた。

キャラクターデザインが可愛いというのもそうだが、悩み葛藤しているジルを見ているとそんな彼女を応援したくなる感情がプレイヤーに芽生えるのだ。

このゲームはゲーム内時間の19日目で一応のストーリーが完結する仕様だが、たったの19日間だったとしても、その時間は極めて濃密なものであり、短い期間でありながら確かにジルは一歩前に進むことが出来たという実感を得られる終わり方だった。

偏見かもしれないが海外スタジオ、しかもベネズエラの無名のクリエイターがこのような濃密な物語を描けるというのは驚いた。

ただ、一方でゲーム中に交わされる会話は7〜8割が下ネタや性的な話題であり、プレイする人にとっては不快感を感じることもあるかもしれない。

また、これはコントローラーを使用するコンソールゲーム故の欠点だが、カクテルを調合する時の操作をスティックで行わなければいけないため、思うように操作出来ないこともあり、イライラする点もあった。

エンディングへの分岐や各エンディングへの入り方がわかりにくい・お金の管理がシビア、というのも初見殺しであり、欠点といえば欠点だろう。

ただ、このゲームはお金やアイテムを引き継げる”二周目”があり、エンディングも6種類あるため周回プレイを前提としているように思う。

良かった点

  • 主人公のジルというキャラクターに魅力がある
  • ドット絵でありながら、日本受けしやすいアートスタイル&キャラクターデザインなので親しみが持てる。
  • 下ネタを許容出来れば会話が面白い
  • 世界観設定が秀逸であり、客や同僚との会話でこの世界の問題点が明らかになっていく様子は現実にも通ずる部分があって考えさせられる
  • カクテルを調合するゲームプレイは作業感があるものの、とっつき易く、慣れれば簡単に作れるようになるので良いアクセントとなっている
  • ジルを含め可愛いキャラクターが多く、それぞれに個性も強くキャラが立っている
  • 一人の大人の女性の成長物語という点で、プレイヤーが感情移入しやすい
  • 一周目のプレイ時間は10時間程度なので、気軽にプレイ出来る

イマイチだった点

  • 一部のキャラクターを除けば、物語やエンディングに直接関係ないキャラもいるため、もっとそういったキャラが主要ストーリーに絡んできてほしかった
  • お金の管理がシビアであり、1周目は初見だとバッドエンド直行になりやすい
  • 下ネタが多いため、人によっては拒否感が出る
  • 一部のキャラの出生地や生い立ちなど、明らかにならない謎が結構ある
  • エンディング分岐がわかりにくく、周回プレイをするとそれなりにプレイ時間がかかる
  • 一部のミニゲームの難易度が高い
  • コントローラーのスティック操作に若干難がある

まとめ

明らかにならない謎や、ストーリー的にも消化不良な部分があるが、大人向けのテキストADVゲームとして、このVA-11-Hall-Aというゲームはとてもよく出来ていると思う。

海外のテキストADVゲームにここまでハマるとは正直思っていなかったほど、のめり込める作品だった。

テキストADVゲームや下ネタに抵抗がないのであれば是非プレイしてほしい作品だ。

ちなみに本作は続編である”N1RV Ann-A”(ニルヴァーナ)の製作が決定しており、2020年の発売が予定されている。

本作VA-11 Hall-Aで培った経験を生かしてどのような続編になるのか今から楽しみだ。