本当の天才

天才という言葉は日常的によく使われるし、単純に頭の回転が早かったり学力が異常に高い場合に「あの人は天才だ」と言うことも多いが、世の中には本当の”天才”というのが存在する。

頭が良かったり学力が高いだけではなく、常人では到底真似できないことを易々とこなし、この世に存在するありとあらゆる分野でそれこそ天才的な能力を発揮する人がいる。

僕はちょうど10年前にある一人の天才と会ったことがある。

その人は毎年、東大や早稲田、慶応と言った難関大学を受験し、難なくと合格し、入学を拒否するというサイクルを繰り返していた。

彼によれば「難関大学を受験するのは自分の能力や学力を試すためだけに遊びでやっているのであり、大学に行く気はない」とのことだ。

彼は社会の表の世界と闇の世界を熟知し、表の人間と裏の人間両方に深いコネクションを持ち、難関大学を易々と合格できる学力を持ちながら大学には入学せず、本人曰く「クリエイティブな仕事」をして生活しているという。

しかもある界隈では有名な存在であり、表社会では名前はあまり知られていないが、裏社会ではある程度名の通った存在だった。

最初はその話を聞いても僕は信じなかったが、様々な証拠を見せられて、彼の言っていることが全て事実だと認識した時は驚いたものだ。

僕は彼に訪ねたことがある。

「君の持つその能力はどうやって手に入れたのか?努力の結果なのか?」と。

その答えは「努力も何もしていない。最初からあった」というものだった。

彼は全てを持っていた。

恋人もお金も学力も人脈も知識も、全てに関して完璧と言えるほどの要素を備えている人間だった。

冗談や誇張ではなく、彼はやろうと思えば社会を大きく動かすことも出来るような人間だった。

ただ、彼自身は権力的な立場に立つことは拒んでいたが。

残念なことに、彼とは8年前から連絡を取っていないが、恐らく彼はその類稀なる能力を駆使して今も悠々自適に暮らしているだろう。

世の中には本当に天才としか言えない、神様から全ての能力を与えられたような人間が存在する。

そして恐らく、そういった人々には僕を含めた一般人がいくら努力を重ねようと追いつけないだろう。

天才というのはただ頭が良いだけではない。

自分の中にある全ての能力を引き出すことが出来、かつ、その能力を100%活かすことが出来るのが本当の天才だ。

世の中には映画やマンガでしかお目にかかれない人間が確かに存在する。

そういった意味で彼と出会えたのは僕にとっては幸運だったのかもしれない。

恐らく彼ほどの天才にこの先会う確率はかなり低いだろう。

だからこそ、僕はあまり安易に天才という言葉は使わないようにしている。その言葉が真に当てはまる人が世の中には少数ながら存在するからだ。

それにしても神様というのは不思議なものだ。

最初から全ての能力を与えられる人間もいれば、僕のように何も持たない人間も存在する。

それが不公平だとは言わない。ただ、そうした人間とそうでない人間を分けるものは一体なんなのだろうか。それが神様の采配だとしたら、なんとも残酷な話だと思った。