本屋で表紙が気になり衝動買いした三秋縋の”恋する寄生虫”読了。
これは...ここ数年読んだ小説の中で一番面白かったかもしれない。
僕はそんなに本を読むほうではないが、それでもこの作品は名作なのではないかと思う。
いわゆる恋愛ものに分類される小説だけれど、そこに寄生虫という題材を絡めて一風変わった物語になっている。
”潔癖症の男と視線恐怖の女子高生が恋をする。しかし、それは操られた恋だった。”
あらすじは極めてシンプルでありながら、心情描写が細かく、読みながら思わず作中の二人を応援してしまう。
僕はそもそもどのようなエンターテイメント作品でも恋愛もの、いわゆるラブロマンスが好きだったりする。
そして恋愛もので大事なのは読者や観客が”作中の恋をする二人を応援することができるかどうか?”なのではないかと思う。
そういった意味でこの作品は読者をぐいぐいと感情移入させて作中の二人の恋を応援せずにはいられない。
ラストがハッピーエンドであるかどうかは読者によって意見が分かれるところだが、一言で言うならとても「切ない」ラストだった。
何よりヒロインである佐薙ひじりというキャラクターがとても魅力的で、なんとも言えない愛らしさがある。
この作品はいわゆるライトノベルに分類されるのだろうが、ライトノベルによくあるようなヒロインの可愛さを全面に押し出すような描き方はせず、心情描写で読者の共感を呼んでキャラクターを好きにさせるタイプだ。
ストーリー、設定、キャラクター、どれも僕好みで読んでいてとても面白く、このような作品に出会えたことを幸せに思えた。
ふらりと立ち寄った本屋で、作者も知らず、なんの事前情報もないまま購入した本だが、素晴らしい作品だった。
僕は本というのは”出会い”だと思っている。
「面白い本を探しに行こう」と意識的に本屋に行っても特に目に付く作品はないことが多いが、目的もなくふらりと本屋に立ち寄ると、視界に入った本に無性に引き寄せられるような瞬間がある。
まるで本が「これは君のための本だ」と主張しているような感覚だ。
そうして手に取った本は僕をがっかりさせたことがない。
本は「面白い作品」を自分で探さずとも、本の方からこちらに主張をしてくることがある。
こういう出会いがあるから、僕は紙の本が好きなのだな、と思った。
こうした出会いは電子書籍ではまず味わえないからだ。
”恋する寄生虫”という作品と三秋縋という作者に出会った、この巡り合わせに感謝を。
まったく、寄生生物に頼らないと恋もできないんだから、これじゃあどっちが寄生者かわからないね
-佐薙ひじり