
何かがあって気分が落ち込み、深い絶望の底に沈んだ時は明るい話や明るい物語は聞きたくないし見たくないものだ。
落ち込んでいる時に明るい映画や明るいマンガ・明るいドラマなどを見ても気分が晴れることはない。
人によっては違うかもしれないが、少なくとも僕はそうだ。
ここでは気分が落ちこみ、絶望の底に沈んだ際に読むと楽になるマンガを紹介する。
いずれの作品もシリアスであり、コメディはほぼない。
INDEX
ワールドゲイズクリップス

五十嵐藍によるマンガシリーズ。
内容は少女たちの取り留めのない日常や、それぞれの悩みを独特なテイストで描いたものであり、特定の主人公がいるわけでもなく、ストーリーの繋がりもほぼないので、短編集と言ったほうが近いかもしれない。
暗い話ではなく、中には明るい話も含まれているが全体的にアンニュイとした雰囲気が漂っており、夢の中の物語のような漠然とした独特の空気感を醸し出している。
性的な描写も多いが、女性作者らしくえげつない描写はないので不思議な清潔感がある。
気分が落ち込んでも読むと気持ちが軽くなる作品。
ローファイ・アフタースクール

同じく五十嵐藍による短編集。
少女たちの日常や悩み、取り留めのない話を纏めた点はワールドゲイズクリップスとほぼ同じ。
短編集であるため手軽に五十嵐藍の作品の世界観を楽しめる。
ワールドゲイズクリップスとセットで読むのをおすすめ。
最終兵器彼女

およそ18年前の作品。
世間では「セカイ系」の代表作とも言われるマンガ。
略称は「サイカノ」。
北海道に住む主人公である高校生の「シュウジ」は、学校では大人しく目立たない少女「ちせ」から告白を受けて、なんとなく付き合うことになる。
ある日、シュウジが友人たちと札幌に遊びに出かけたところ、突然国籍不明の多数の爆撃機から空襲を受ける。
その中で敵機を次々と撃ち落としていたのが、なんと体が一部機械になり自衛隊の”最終兵器”と化した「ちせ」だった。
あらすじだけを読めば「少年漫画にありそうだ」と思いそうだが、この作品では実際に日本が戦争に巻き込まれ、日本も世界の国々も滅びていく様子や、自衛隊員・民間人の死、地球という星そのものの終わりも描かれる。
日本も敵国も、もはや自分の国がどこと戦争しているのかすらわからない泥沼と化す。
あえて結末を言ってしまうが「最終的に人類は滅亡し、地球(世界)も終わる」。
性的な描写や残虐描写、人の死も多数描かれる。
好きな登場人物がいたとしても、そのキャラクターは大半が悲惨な最期を迎える。
描かれるのはシュウジとちせの愛の物語と、戦争と災害により地球が徐々に終わっていく過程である。
しかし、絶望だけを描いているのではなく、恋、そして人と心を通わせることの難しさ、戦争、そして世界の終わりという状況下で愛というのはどのような役割を果たすのか、といったテーマも描いており、極めて濃厚な物語が展開される。
コメディ要素もあるにはあるが、大半が重い話なので読む前は結構覚悟がいる作品だが、最後まで読めば読んで良かったと思える作品だと思う。
最終兵器彼女外伝集―世界の果てには君と二人で

最終兵器彼女の外伝。
収録されているのは最終兵器彼女と同じ世界観の中で展開される短編である。
シュウジとちせの何気ない日常、あるいは戦争勃発直前の少年少女の話、あるいは戦争中の一兵士の最期を描いた話など、最終兵器彼女の世界観を多角的に楽しめる。
最後に収録されている話は「戦争で滅亡したと思われていた人類が再び歩き出す」というような終わり方をするため、最終兵器彼女のその後の世界に希望を見出すことができるようになっている。
この外伝集だけでも最終兵器彼女という作品の雰囲気は十分に堪能できるので、本作だけを読んでもいい。
あおぞらとくもりぞら

三秋縋による小説のコミカライズ版。
イラストは著名イラストレーターのloundraw氏が手がけており、恐らく氏が担当したマンガは本作だけのはず。
人を操って対象を自死させる能力を手に入れた主人公が、一人の少女に出会う。
最初はただ彼女を自死させるためだけに少女に近づいた主人公であったが、やがて二人は惹かれ会っていく。
原作小説は未読で、コミカライズである本作も2巻時点で完結には至っていないが断言できるのは「ハッピーエンドにはならない」ということ。
三秋縋の作品はほぼ全てが登場人物全員が笑って過ごせるようなハッピーエンドは迎えないため、本作もハッピーエンドではないことは容易に想像がつく。
まず絵が綺麗なのでそれだけを目的に読んでもいいが、内容は結構重い話のため、気分が落ち込んだ時に読むと気持ちがいい。
寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。

同じく三秋縋による小説のコミカライズ版。
寿命を買い取ってくれるという店で、自身の寿命のほとんどを売り払った主人公の、一人の女性との出会いと、残り少ない寿命の中で過ごす人生を描いた作品。
原作小説も読了済みであるが、三秋縋なので客観的に見るとハッピーエンドとは言えずとも、読者によっては解釈も違ってくるであろうエンディングを迎える。
「あおぞらとくもりぞら」同様、明るい話ではないが、かといって暗い話でもない、ちょうどいい塩梅の心地よさが感じられる作品。
恋する寄生虫

またまた三秋縋による小説のコミカライズ版。
コミカライズ版は現時点では完結していない。
極度の潔癖症(強迫性障害)を患う27歳の主人公と、同じく精神に問題を抱える一人の女子高生との出会いと数奇な運命を描いた作品。
原作小説も読了済みで、小説版もコミカライズ版も三秋縋作品の中では最も好きな作品。
寄生虫というのは暗喩でも比喩でもなく、本当の”寄生虫”の話を扱っている。
ヒロインである佐薙ひじりがとにかく可愛く、それだけにエンディングは人によっては「絶望」に感じるかもしれないし、一方で「救い」と感じる人もいるかもしれない。
僕は原作小説読了時にしばらく呆然としてしまった。
エンディングの良し悪しに関わらず、原作小説と併せて是非読んでほしい作品。
なるたる

鬼頭莫宏によるおよそ20年ほど前のマンガシリーズ。
一人の少女が不思議な生命体(厳密には生命体ではない)と出会い、世界の存亡にも関わる大きな運命に巻き込まれていく話。
明るい絵柄とは裏腹に、内容は政治やいじめといった社会問題が描かれ、猟奇的な描写も多数ある。
アニメ化もされたが、後半になるにつれて猟奇的な描写が増えるため、アニメ版では原作版の後半のストーリーは描かれなかった。
ざっくり言ってしまうとエンディング以外夢も希望もない作品。
この作品を読んで寝込んだ人もいるんじゃないかと思うくらいに暗い話だ。
しかしこの作品はただ暗いだけの話ではなく、現代社会の闇・生きる意味・命とは何か?といった重厚なテーマを扱っており、鬼頭莫宏独特の描写で綴られる物語に僕は大きな影響を受けた。
絶望することを覚悟して、是非読んでほしいシリーズ。