Touch Bar&Touch ID搭載Magic Keyboardが出ない理由

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Macユーザーの間ではTouch Bar&Touch ID、あるいはTouch IDのみを搭載した次期Magic Keyboardを望む声が一部である。

Appleは既にTouch Bar&Touch ID搭載のMagic Keyboardの特許自体は2019年に出願済みであるが、では何故Magic Keyboardの2015年のアップデートから既に4年も経っているのに次世代のMagic Keyboardが出ないのか?

Appleが2019年に出願した特許
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ここではTouch Bar&Touch ID搭載のMagic Keyboardが出ない理由を考察してみたいと思う。

Touch Bar&Touch ID搭載の次世代Magic Keyboardが出ない理由

バタフライキーボードで躓いた

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MacBookシリーズにバタフライキーボードが採用されて以降、バタフライキーボードの故障の報告が後を絶たず、Appleによる無償修理プログラムが現在でも行われている。

Appleは2015年のMacBook Retina 12インチから順次MacBookシリーズに搭載されていったバタフライキーボードを当初は次世代Magic Keyboardにも搭載するつもりだったと思われる。

バタフライキーボードをMacBookシリーズ全てに搭載しておきながらMagic Keyboardはシザー構造のまま、というのは統一性もないし、更にMagic Keyboardをシザー構造からバタフライ構造に変更したとしてもそれほどコストもかからない。

しかし、バタフライキーボードはMacBookシリーズに搭載された当初から故障が多く報告され、Appleは世代を重ねて改善を図ったが完全にバタフライキーボードの問題を解決することはできず、2019年11月にリリースされたMacBook Pro 16インチモデルからはシザー構造に戻すことになった。

このバタフライキーボードの混乱&改善の間に次世代Magic Keyboardの構想は宙に浮いた状態になったと推測できる。

Touch Barを搭載した場合、コストや技術的な問題をクリアする必要がある

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もしMagic KeyboardにTouch Barを搭載しようとした場合、まずTouch Barを搭載すると当然コストが増え価格が跳ね上がる(MacBookシリーズのTouch Barは有機ELである)。

更にTouch Barのアニメーションを無線で送受信するにはフレームレートやレスポンスの問題を克服する必要がある。

Bluetoothは主に小型機器やオーディオ機器の電波を送受信するためのもので映像信号を高フレームレートで送受信可能なようには出来ていない。

Magic Keyboard内に専用のプロセッサを搭載すればアニメーションやレスポンスの問題は克服できるかもしれないが、そうなるとまたコストがかかり、バッテリー容量もTouch Bar表示用とプロセッサ用にその分確保する必要もある。

Touch IDの場合、セキュリティ的にリスクがある

画像出典 Apple

Touch BarではなくTouch IDのみをMagic Keyboardに搭載するとしても、そこにはセキュリティ的に解決すべき問題がある。

まずTouch IDはiPhoneにしろiPadにしろMacBookシリーズにしろ、指紋情報はデバイス内部のT2チップなどの「Secure Enclave」というAppleでさえもアクセス不可能な領域に保存することで安全性を確保している。

もし無線接続のMagic KeyboardにTouch IDを搭載する場合、Magic Keyboard内に専用チップを用意し「Secure Enclave」領域を設ける必要があるため、これまたコストがかかる(Secure EnclaveはApple AシリーズチップやT2チップなどの専用チップが必要)。

更に無線で指紋認証の情報を送受信するには暗号化したとしても外部から読み取られるリスクが存在する。

米Microsoftは既に指紋リーダーを搭載した無線キーボード「Microsoft Modern Keyboard with Fingerprint ID」をリリース済みであるが、サポートページを見るとわかるようにペアリングの方法が特殊であり、更にiPhone・iPad・MacBookシリーズのTouch ID(Secure Enclaveに情報を保存する方法)と比べるとセキュリティ的に劣る。

Microsoft Modern Keyboard with Fingerprint IDはTPMと呼ばれる一般的に広く普及しているセキュリティチップに指紋データを格納しているが、Touch IDの指紋情報を格納する「Secure Enclave」を含むチップ(T2チップなど)はそれらTPMとは違った設計思想によって提供されている。

指紋リーダーを搭載したMicrosoft Modern Keyboard
国内では販売されていない
画像出典 Microsoft.com

Microsoft Modern Keyboardと同じことをMagic Keyboardでやろうとすると、Magic Keyboard内の「Secure Enclave」領域のチップを無線でも安全に送受信できるように専用設計にする必要が出てくる上、macOS自体にも機能の追加が必要になる(Microsoft Modern Keyboardは最新アップデート適用済みのWindows 10専用)。

Redditのあるユーザーは完全にセキュアなTouch ID付きMagic Keyboardを実現するなら、指紋情報を格納する専用チップ・BridgeOS・安全に指紋認証情報の読み取り・読み出し・保存をする方法、更にはセキュリティトークンなどの仕組みを用意する必要があり、現実的ではないと書いている。

まとめ

今回まとめた情報はあくまで僕個人の主観・推測によるものであるが、実際に次世代Magic Keyboardに関しての噂が全くないこと、新型Mac Proがリリースされたのにも関わらず、Magic KeyboardやMagic Trackpad 2、Magic Mouse 2のアップデートがないことを考えると、Appleは当面現行のMagic Keyboardだけで十分と考えているように思える。

Touch BarならまだしもTouch IDについては一番の問題は「セキュリティ」であり、Appleが仮にTouch ID搭載のMagic Keyboardをリリースしたとして、万が一その指紋情報が悪意ある者に読み取られるようなことがあれば今までiPhoneやiPad、MacBookシリーズで築き上げてきたTouch IDの「安全神話」が崩壊してしまい、「Touch ID」という一種のブランド自体が信用を無くすことにもなる。

少なくとも既存のTouch IDと同等のレベルの安全性が保てなければ、それだけのリスクを背負ってまでTouch ID搭載のMagic Keyboardをリリースする理由はAppleにはないのではないか。