
macOS CatalinaではiPadをワイヤレスでサブディスプレイ化できる”Sidecar”という機能が有名であるが、Sidecarを使用するとどれだけMacのパフォーマンスに影響が出るのかベンチマークをしてみた。
INDEX
テスト環境
テストに使用した環境は以下の通り。
使用Mac Mac mini 2018 Core i7 6コア12スレッド・メモリ32GB macOS macOS Catalina 10.15 eGPU Blackmagic eGPU(Radeon Pro 580) 使用モニター LG 27UK650-W(4K HDRモニター) 擬似解像度 3008x1692 接続先iPad iPad Air 第3世代(A12 Bionicチップ)
Sidecar有効・無効の比較ベンチマーク
早速本題のベンチマークに入ろう。
なお、ベンチマークにあたってはSidecarの接続にはiPad Air 第3世代を使用し、実使用に近い環境を作り出すためにiPad Airの画面側でPhotoshopを起動している。

またCPUベンチマークについては複数のベンチを走らせてみたがSidecar利用の有無によるパフォーマンス変化はCPUベンチマークには一切現れなかったため、GPUベンチマークのみとなる。
Geekbench 5 Metal


Geekbench 5ではSidecarを有効にするとおよそ8000もスコアが低下。
Cinebench R15 OpenGL


同様にCinebench R15 OpenGLでも10fps以上フレームレートが低下。
Unigine Heaven


Mac版Unigine Heavenをフルスクリーンで実行した結果、意外なことにSidecar利用の有無によるパフォーマンスへの影響はほぼない。
最低FPS(Min FPS)はSidecar有効時だと下がっているが総合的なパフォーマンスは同じだ。
Parallels Desktop 15 Unigine Heaven(Windows)


続いてはParallels Desktop 15上のWindows 10でUnigine Heavenを実行した結果。
こちらもMac版Unigine Heavenと同様でSidecarの利用によるパフォーマンスへの影響はほぼ見られず無視できるレベル。
Mac版と同じく最低FPSは下がっているがGeekbenchやCinebenchと比べるとその低下率は低い。
なおMac版よりParallels Desktop上のUnigine Heavenのスコアが高いのは実行したWindows 10の解像度がMacでのテスト時より低いためである。
所感と推測

4種類のベンチマークソフト/環境でそれぞれSidecar有効・無効状態のベンチマークを取ってみたが、Geekbench 5やCinebench R15のようなウィンドウモード及びレンダリング解像度があらかじめ決まっているベンチマークではSidecarを使用するとGPUパフォーマンスが著しく落ちる。
これは数値だけの問題ではなく、実際にSidecarをオンにしているとPhotoshopなどでマウスポインタが明らかに動きが遅くMac(GPU)が悲鳴を上げているかのようだった。
ただし、Unigine Heavenのようにフルスクリーン前提で、なおかつレンダリング解像度が擬似解像度やモニターの解像度によって可変するベンチマークではSidecarの利用によるパフォーマンス低下はParallels Desktopなどの仮想環境でもほぼ無視できるレベル。
まとめ
今回テストした結果を簡潔にまとめる。
- CPUについてはどのCPUベンチマークであってもSidecarの利用によるパフォーマンス低下はなし
- GPUパフォーマンスはSidecarの利用により体感できるレベルで落ちる
- フルスクリーンでレンダリングするようなソフトウェアの場合はSidecarの利用によるパフォーマンスへの影響はほぼなく、無視できるレベル
基本的にはSidecarの利用は「GPUへの負荷が高まる」という認識でよいと思う。
もっとも僕のMacは擬似解像度が高いため、元々Macへの負荷が高い状態であり一般的な1920x1080や2560x1440程度の擬似解像度であれば問題ない負荷ではある。
ただ、非力なGPUではSidecarを使用してApple Pencilでイラストを描くといった作業は厳しいと思われる。