
Appleは日本時間11月14日、以前から噂されていた16インチのディスプレイを搭載した新たなMacBook Pro 16インチモデルをリリースした。
この16インチモデルは以前までの15インチモデルを置き換えるものであり、新たに16インチモデルがラインナップに加わったというわけではない。
今回はこの新型MacBook Pro 16インチモデルと以前までの15インチモデルとの違いを比較していきたい。
INDEX
新型MacBook Pro 16インチモデルの変更点
価格

価格に関しては「価格はほとんど変わらないだろう(About the same)」という噂が最近流れていたが、噂通りベースモデルが248,800円、上位モデルが288,800円であり従来とほぼ変わっていない。
以前までの噂では日本円にして30〜35万程度になるのではないかと言われていたがそれは杞憂だったようだ。
ディスプレイ

見た目での一番の変更点はやはりディスプレイだろう。
ディスプレイ部分のサイズは以前の15インチモデルとほぼ同じでありながらベゼル(額縁)を細くしたとことで画面サイズは16インチへと4%大型化している。
物理的に大きくなっただけではなく、解像度も従来の2880x1800から3072x1920へと高解像度化が行われている。
またppi(画素密度)も従来の220ppiから226ppiへと若干ながら高くなっている。
ただ、ディスプレイの性能自体は従来までのディスプレイと同じ500ニトの輝度、P3色域サポートなど変更点はない。

個人的に興味深いと思ったのがAppleの紹介ページを見てもどこにも「HDR」に関する記載がないことだ。
Appleが6月に発表したPro Display XDRではHDR性能をプッシュしていたし、iPhone X以降のiPhoneやiPad ProでもHDRをサポートしているのに対してMacBook Pro 16インチモデルのディスプレイは一切そういったHDR性能のアピールを行なっていない。
以前からしつこいくらいに指摘しているが、やはりmacOS Catalinaで現状HDRを有効にできない問題があるためなのだろうか。
いずれにしろディスプレイは大型化したがそのディスプレイ自体に新機能などはなく、性能自体も従来までと同じだ。
サイズと重量

ディスプレイ部分のサイズが従来までとほぼ同じとは言え、従来までの15インチモデルと比べると厚さや幅、重量が若干ながら厚く、大きく、重くなっている。
従来までの15インチモデルが高さ1.55cm、幅34.93cm、奥行き24.07cm、重量1.83kgであったものが新型16インチモデルではそれぞれ1.62cm、35.79cm、24.59cm、2.0kgになっている。
それほど大型化したわけではないが可搬性という意味では若干ながら従来の15インチモデルと比べると劣る。
キーボード

キーボードには新たにシザー構造を採用、というよりはシザー構造に戻し、2016年のMacBook Proから採用されてきたバタフライキーボードは廃止となった。
バタフライキーボードは登場当初から故障率の高さで不評であり、Appleもなんとか故障率を下げようとバタフライキーボードの改良を行ってきたが完全な問題解消には至らずシザー構造へと戻したようだ。
また、細かな点としては矢印キーが逆T字型になっており上下キーの区別が明確にされている。
なおシザー構造のキーボードというのは日本国内ではパンタグラフ式と呼ばれており、Windows PCを含む世間一般のPCで最も多く採用されている歴史が長い構造のキーボードである。
Touch Bar

Touch Barは引き続き搭載されているが、大きな変更点としてTouch IDボタンと更にESCキーが物理的なキーとなり独立しているところだ。
僕もTouch Bar付きのMacBook Pro 13インチを所有しているが物理的なESCキーがないのはやはり不便に感じていたためこの変更は歓迎したい。
Appleのマーケティング上級副社長のフィル・シラーによれば「Touch Barに関しては物理的なESCキーがないことに対する苦情が最も多かった」という。

Touch IDは以前までと同じ物理的なキーではあるがTouch Bar部分から若干スペースが空けられており、以前までのTouch Barと繋がった構造から完全に独立した構造へと変更されている。
冷却システム

冷却システムはファンを改良して空気の流れを最適化し従来より28%空気の流れが増加、ファンに熱を伝えるヒートシンクも35%大きくなっている。
GPU

グラフィックには新たにRadeon 5000Mシリーズが採用されている。
Radeon 5000MシリーズはGPUのアーキテクチャが従来の「Polaris」世代から「Navi(RDNA)」世代へと進化しており、低消費電力・高性能になっており、更にビデオメモリも新たにGDDR 6を採用しておりメモリ帯域が飛躍的に向上している。
選択可能なモデルはRadeon Pro 5300M、5500Mの2種類だけであるが、5500Mに関しては4GB版と8GB版の2種類が存在する。
オーディオ

オーディオは新たにスピーカーに振動を軽減するデュアルフォースキャンセリングウーハーが搭載されており、6スピーカーサウンドシステムと呼称される新型のサウンド環境が実現されている。
マイクも3アレイを搭載し、雑音を低減したクリアな録音が可能になっているという。
当然のことながらmacOS Catalinaでサポートされた映画などのDolby Atmosサウンドシステムにも対応する。
なお3.5mmヘッドフォンジャックは引き続き搭載されている。
ストレージ

ストレージは最大8TBまで選択できるようになり、これはMacBook Pro史上最高のストレージ容量である。
ただし8TBのストレージを選択した場合、価格は+24万2,000円となるため極めて高価だ。
バッテリー

バッテリーには新たに100Whの新リチウムポリマー電池を採用し、Wi-FiでのWeb閲覧及びビデオ再生は最長11時間と近年のMacBook Proとしては最も長いバッテリー駆動時間を実現している。
また、同梱される充電アダプターも96Wとなり従来より増強されている。
従来と変わらない点

ここまで従来の15インチモデルから新たに変更された点を書いてきたが、逆に従来と変わらない点も存在する。
まずCPUは従来の15インチモデルと全く同じであり、Intel 第9世代のCoffee LakeのCore i7-9750H@2.6Ghz、Core i9-9880H@2.3 Ghz、Core i9-9980HK@2.4Ghzの3種類となる。
CPU性能に関しては変更は全くない。
また、Wi-Fiに関してもiPhone 11シリーズで採用されたWi-Fi 6(802.11ax)は搭載せず、従来までと同じくWi-Fiは802.11ac となる。
Bluetoothも5.0。
T2セキュリティチップを搭載している点やポート類がThunderbolt 3のみなのも従来と同じだ。
またApple Care価格も従来と同じ35,800円である。
まとめ
新型MacBook Pro 16インチは買いなのかと聞かれれば、従来の8コアモデルの15インチMacBook Proを持っているのでない限り「買い」だと言える。
驚くような新機能や革新的な技術が搭載されたわけではないがTouch BarからESCキーが独立して物理キーになったり、キーボードが信頼性の高いシザー構造に変更されたり、GPUが新世代へと移行するなど堅実な改良が施されている。
それに対して価格に関しては従来までとほぼ同じのため、これから新たにMacBook Proの13インチモデル以外を購入するのであればこの16インチモデルは間違いなくおすすめできる。
唯一残念なのはCPUが従来までの15インチモデルに搭載されていたものと全く変わらない点であるが、だとしてもCPU性能が非常に高いことには変わりない。
大型のディスプレイを搭載したMacBook Proを検討しているならこの16インチモデルは間違いなくおすすめだ。