先日2019年6月3日(米国時間)に行われたWWDC 2019 基調講演においてAppleは新型Mac Proを発表した。
この記事では需要があるかはわからないが、本来比べるべくもないMac mini 2018と新型Mac Proを比較検証してみたい。
INDEX
新型Mac Proの概要

Appleは新型Mac Proの発表に長い時間をかけてアピールを行ったが、簡潔に言えば、Apple史上最速のコンピューターであり、かつApple史上最も価格が高いApple製品だ。
筐体は前世代と比べてかなり大きくなり、ユーザーによるコンポーネントのアップグレードの柔軟性が飛躍的に向上している。
また、Afterburnerと呼ばれるProRes環境のスピードを底上げするハードウェアアクセラレータも導入することが出来る。
更にMPXモジュールと呼ばれる2つのGPUを一つのモジュールにした拡張カードも用意されており、このモジュールを2つ組み合わせると合計4GPUが連携して動作することが可能となり、その際の浮動小数点演算性能は56テラフロップスに達する。
参考までにゲーム機のPlayStation 4 Proは4.2テラフロップス、Xbox One Xが6テラフロップス、現在一般向けグラフィックスカードとして最高性能のGeForce RTX 2080 Tiが15テラフロップスである。
最低価格は8コアXeon・メモリ32GB・SSD 256GB・Radeon Pro 580Xの構成で$5,999であり、日本円に換算すると65万円弱となる。
Radeon Pro 580XはX無しのRadeon Pro 580と同じくApple向けに独自カスタマイズが施されたAMD GPUであり、新型Mac Proの他にiMac 5Kなどにも採用されている。

Radeon Pro 580Xに関しては海外のサイトを回ってもほとんど情報がないが、TechPowerUpの情報を見る限り、性能はGTX 970と同等で、GTX Titan以下であり、それほど性能が高いGPUではない。
また、8コアXeonに関しても8コア版のXeonはありふれた存在であり、既存のCore i9の8コアと比較すると性能はどっこいどっこいだろう。
Appleは新型Mac ProのXeonのモデル名を明かしていないが、時期的に考えると8コア版のXeonはXeon W-2145だろう。
同様の理由で最高カスタマイズした場合の28コアXeonはXeon W-3175Xと思われる。
最高カスタマイズした価格は現在不明であるが、Xeon W-3175XのCPU単体で45万円近くするため、その他のコンポーネントを合わせると恐らく500万円以上になることが予想される。
新Mac Proを市販パーツで最強仕様にすると500万円近くに… GIZMODO
Mac mini 2018の概要

Mac mini 2018は2018年10月に発表され、4年ぶりに外観からIO・スペックなどほぼ全てが刷新され、最高にカスタマイズした場合6コア i7・メモリ64GB・SSD 2TB・10Gbイーサネットで39万7800円(税別)に達する。
ちなみに搭載CPUは従来のi7から2コア増えて最大6コアになったのが特徴のCoffee Lakeアーキテクチャであるが、モバイル版ではなくデスクトップ版のCPUである。
グラフィックに関しては内蔵グラフィックしか選べず、グラフィック性能をアップさせるには別途eGPUを導入する必要がある。
Blackmagic eGPU(Radeon Pro 580)(税別89,800円)を導入した場合、最高カスタマイズしたMac mini本体と合わせると50万近くに上るが、それでも新型Mac Proの基本スペックより安く、かつCPUとグラフィック以外はMac mini 2018が上回る。
仮にMac mini 2018をメモリ32GB・SSD 256GBにして新型Mac Proとスペックを出来るだけ近くした場合、21万円程度になり、Blackmagic eGPUと合わせても30万円程度で済む。
基本スペックのMac Proを買うよりはカスタマイズした方がいい

正直新型Mac Proの基本スッペックはカスタマイズしたMac mini 2018と性能がそれほど変わらず、基本スペックのMac Proを買うくらいならMac mini 2018を購入した方がずっとコスパは高いだろう。
もちろん、拡張性やIOなどを考えるとMac Proに軍配が上がるし、そもそも比べるべき製品ではないのだが、基本スペックの新型Mac ProがMac mini 2018とそれほどスペックに差が出ないというのはちょっと意外だ。
無論CPUがXeonであり、2コア分の差がある他、CPUのキャッシュ容量など細かい点を見れば違う部分もあり、その他諸々の点においても新型Mac Proは大きなアドバンテージを持つが、コスパの良さではMac mini 2018が圧勝していると思う。
基本スペックの新型Mac Proを買って、自分でコンポーネントを安く揃えるということも出来るが、AfterburnerやMPXモジュールといった新型Mac Pro独自のコンポーネントは市販製品にはなく、スペックをとことん上げるなら、やはりApple公式でカスタマイズするしかない。
Mac Proは完全なプロ向け・業務用途Macとなった

2013年に発売されたあの有名なゴミ箱型のMac Proは、拡張性には乏しかったものの、当時あの性能で最低価格が29万8800円だったため、プロ以外にも動画編集を行うYouTuberなどがこぞって購入していた。
しかし、2019年の新型Mac Proはもはやハイアマチュアですら躊躇するほどの価格になり、完全にプロ向け・業務用途向けMacと化したと言えると思う。
もちろん中には購入する一般ユーザーもいるだろうが、あくまで新型Mac Proはプロ・業務用途がターゲットだろう。
同時に発表された6KディスプレイであるPro Display XDRもスタンドだけで$999(日本円で11万円弱)であり、本体は$4,999(日本円で54万円)に達するため、こちらも完全に一般ユーザーからハイアマチュアはお断りといった感じの値段設定である。
2010〜2013年まで販売されていたAppleの純正ディスプレイ”Apple LED Cinema Display”は当時としては珍しかったWQHD(2560x1440)の解像度でありながら、価格は$999であり、これはPro Display XDRのスタンドと同じ価格である。
今回の新型Mac Pro及びPro Display XDRの発表によって、Mac ProもApple純正のディスプレイも完全にプロ・業務用途向けにシフトした。
邪推であるが、恐らく新型Mac Proのあまりの価格の高さと釣り合いを取るためにAppleはMac mini 2018のスペックを今までのMac miniシリーズから格段に上げたのではないだろうか。
「新型Mac Proを買えない人はMac mini 2018を買ってね」という声が聞こえてきそうなほど、Mac mini 2018はMac Proとのギャップを補う立ち位置となっている。
まとめ
今回の新型Mac Proの発表を受けて、海外コミュニティも日本コミュニティも性能の高さや価格の高さに、良い意味でも悪い意味でも盛り上がっているが、僕は新型Mac Proが高すぎるとはあまり思っていない。
確かに最高カスタマイズした場合500万円を超える可能性があるマシンというのは常軌を逸しているが、Appleとしてはこの新型Mac Proは一般ユーザーはもちろんハイアマチュアユーザーすら眼中になく、完全にプロ・業務用途向けとして販売したいのだと思う。
プロ業界の人は価格が例え500万だとしても、買う人は買うだろう。
個人的に期待したいのは今回の新型Mac Proの発表、あるいは秋の発売に伴って旧型のMac Proが中古市場で値下がりすることだ。
Mac Pro 2013は型落ちとは言え現在でも十分通用するスペックを持っているし、Thunderbolt 3などの最新IOポートを除けば5Kディスプレイだって繋げることができ、動画編集用途程度であれば楽々こなせるマシンだ。
ただ、Mac mini 2018の絶妙な価格と性能のバランスを考えると、やはり今一番お買い得なデスクトップ型MacというとMac mini 2018になると思う。