
Mac mini 2018の6コアi7版はCPU温度が100度を超えることも珍しくなく、その爆熱っぷりは度々記事にしてきたが、CPU温度の上昇によるCPUクロックの落ち込みはどの程度なのか調べてみた。
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CPU温度によるクロックダウンとは?

通常CPUには内部に数多くのセンサーが搭載されており、発熱などによりCPUに異常が発生する可能性がある場合は自動的にクロックを落として発熱を抑える保護機構がある。
また、CPUには「この温度までなら大丈夫」というCPUの許容最大温度(プロセッサー・ダイで許容できる最大温度)があり、Intelの場合はその許容最大温度をTJunctionと呼称している。
IntelのCPUであればTJunctionは大体100度である。
この温度を超えた場合、あるいは超えそうな場合はCPUは自動的にクロックを落とす。
TJunction(CPUダイ許容温度)とTJunction Max(CPUの保護機構が働く直前の最大温度)という表記もあるのだが、Mac mini 2018のCore i7 8700Bの場合、TJunction Maxの値はIntelのスペックシートに明記されていない。
Mac mini 2018のCPUスペック

Mac mini 2018を6コアi7にカスタマイズした際に搭載されるCPUはCore i7 8700B。
デスクトップ版のCore i7 8700をモバイルパッケージに収めたものであり、性能自体はデスクトップ版と全く変わらない。
Core i7 8700Bの簡易スペックシート
コア数 | 6コア |
スレッド数 | 12スレッド |
ベースクロック | 3.2Ghz |
ターボブースト | 4.6Ghz |
TJunction | 100度 |

ターボブースト時のクロックは1コアに負荷がかかっている場合は4.6Ghz、2コアは4.5Ghz、3コアは4.4Ghz、4コア〜6コア負荷時は4.3Ghzとなる。
たとえば1コアのみが使われるような負荷が低い処理は、その1コアのみをベースクロックの3.2Ghzから一時的に4.6Ghzまで上昇させて処理能力を引き上げるということが出来る。
TDPや発熱による問題があるため、負荷がかかるコアが増えるほどターボブーストのクロックは低くなる。
同様の機能としてAMD CPUにもターボコアというものがある。
ものすごくざっくり言うとターボブーストやターボコア機能は「自動オーバークロック」である。
CINEBENCH中の発熱によるクロックダウン
では実際にMac mini 2018でCinebench R20を実行して全コアに負荷をかけ、CPUの温度とクロック数の関係を見てみよう。
CPUクロックの取得にはIntel Power GadgetというIntel純正のソフトウェアを使用している。


Cinebench R20を実行中はCPU温度は開始5〜10秒ほどで100度(iStat Menusでの表示)に達し、そのままほぼ張り付く。
上記画像を見るとわかる通り、最初は6コア負荷時4.3Ghzというスペック通りのクロックで動作するものの、温度が上がっていくにつれてクロックは徐々に落ちていき、最終的には3.6Ghzまで低下した。
この時のCPUコア使用率は99%、CPUパッケージ温度はIntel Power Gadgetの表示で98.2度である。
前述の通り、Core i7 8700/8700Bは本来6コア12スレッド負荷時においても4.3Ghzで動作するはずであり、今回のテスト結果を見ると発熱により本来のターボブーストクロックより0.7Ghzほどクロックが下がっている。
もちろんi7 8700Bはi7 8700と違って独自にターボクロックが下げられている可能性や、Appleによる何らかのカスタマイズが行われていることも考えられるが温度が100度に達するのは事実であり、0.7Ghzのクロックダウンではなくてもクロックは通常のi7 8700Bよりは確実に下がっているだろう。
パフォーマンスダウンはどれくらい?

今回のCinebench R20のスコアは上記画像の通り約2900であり、何回か計測し直したが最大でもせいぜい3000スコアであった。
海外のサイトを回ってみると大体Cinebench R20でのCore i7 8700のスコアは3300〜3500程度まで出ているため、一般的なCore i7 8700と比較すると400程度パフォーマンスが低い。
参考サイト:Intel Core i7-8700 cpu-monkey・Geeks 3D
CinebenchはWindows版とMac版であまり差が出にくいベンチマークなので、少なくとも僕のMac mini 2018のCinebenchのスコアの低さはクロック数ダウンによるものと考えて差し支えないだろう。
とはいえCinebench R20で400程度スコアが低いというのは、たとえ重いアプリケーションを使っていても人間では体感できないレベルなのであまり問題はないのかもしれない。
まとめ
以上、Mac mini 2018におけるCore i7 8700Bの発熱とクロックダウンの関係についてまとめた。
今回テストしてみた限りではMac mini 2018において、発熱によりCPUのクロックがダウンするのは明らかであり、それによるパフォーマンスダウンも確かに存在する。
ただ、過度のクロックの落ち込みではないし、パフォーマンスダウンもベンチマークなどをしない限り気づかない程度なのであまり気にしすぎる必要もないかもしれない。
ちなみに今回紹介したIntel Power GadgetというソフトウェアはIntel公式のソフトウェアである上に、CPUの温度やクロックを見る上では何かと便利なので興味がある人は自分で入れてみて色々とテストしてみるといいだろう。