
今まで多くのeGPUに関する記事を書いてきたが、「そもそもeGPUは必要なのか?」という点にはあまり触れてこなかったため、MacにおいてeGPUは必要なのかをまとめてみたいと思う。
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CPU内蔵グラフィックのMacなら必要というか必須

もし自分のMacがMac miniやMacBook Air、MacBook Pro 13インチなどのCPU内蔵グラフィックしか搭載されていないモデルであれば必要というよりは必須となる。
もちろん、プロ向けアプリケーションなどの重いソフトウェアやゲームをしなければこの限りではないが、CPU内蔵グラフィックのMacをメインマシンとしてバリバリ使うにはeGPUは確実に必要と言える。
最近のMacはMac miniやMacBook Pro 13インチモデルなどのようにGPU以外はiMac 5Kや一般的なPCと比べてもかなりのパフォーマンスを持っているという場合が多いため、CPUなどの他のコンポーネントとのバランスを取る意味でもeGPUは導入した方がいい。


上記画像はMac mini 2018のCPU内蔵グラフィック(Intel UHD Graphics 630)とBlackmagic eGPU(Radeon Pro 580)のGeekbench 4のベンチマークスコアであるが、見ての通りCPU内蔵グラフィックなどのGPUが非力なMacにeGPUを導入しただけでパフォーマンスは劇的と言えるまでに上昇する。


上記画像はMacBook Pro 13 Mid 2019のCPU内蔵グラフィックとBlackmagic eGPU(Radeon Pro 580)のGeekbench 4のベンチマークスコア。
MBP 13 Mid 2019のCPU内蔵グラフィック(Intel Iris Plus Graphics 645)はMac mini 2018のCPU内蔵グラフィック(Intel UHD Graphics 630)よりも性能が向上しているが、それでもeGPUの足元にも及ばない。
ディスクリートGPU搭載Macでは必ずしも必要というわけではない

逆にiMac 5KやMacBook Pro 15インチモデルや新しく発売された16インチモデルなどの場合は、GPUが既にそれなりの性能のディスクリートGPUを搭載しているため、中途半端なeGPUを導入するとパフォーマンスの恩恵はあまり享受できない。
eGPUはCPU内蔵グラフィックであれディスクリートGPUであれ、それらの性能に上乗せされてパフォーマンスがアップするのではなく、eGPUを接続したMacは例えディスクリートGPUがeGPUの性能を上回るとしても基本的にeGPUが優先されて使用される(アプリがeGPUに対応していなかったり複数のディスプレイを使用している場合、Macのモデルによってはこの限りではない)。
たとえばiMac 5Kの最高スペックのGPUはRadeon Pro 580Xを搭載しているが、仮にこのiMac 5KにeGPUを導入するならばRadeon Pro 580Xを上回るパフォーマンスを持ったeGPUを選ばなければ意味がないどころか、パフォーマンスはむしろ下がる。
また、iMac 5Kはベースライン(最低スペックモデル)でもRadeon Pro 570Xを搭載しており、仮にこのiMacにBlackmagic eGPU(Radeon Pro 580)を導入した場合、Radeon Pro 580はわずかにRadeon Pro 570Xを上回る程度の性能しかないためパフォーマンス上昇率は極めて小さい。
同様にMacBook Pro 16インチモデルにおいても下はRadeon Pro 5300M、最上位はRadeon Pro 5500Mを搭載しているため、少なくともこれを上回るeGPUを導入しなければ意味がない。

上記の画像はAppleの前世代のMacBook Pro 15インチモデル紹介ページにおいて掲載されていたBlackmagic eGPUを導入した際の各MacBook Proのパフォーマンス上昇率を示したものだ(16インチモデルの発売により現在は上記の画像の一部はAppleのページから削除されている)。
これを見るとCPU内蔵グラフィックのMacBook Pro 13インチモデルではBlackmagic eGPUであれば6.7倍、Blackmagic eGPU Proであれば11倍のパフォーマンス上昇率となっている。
しかしこれがRadeon Pro 560XのディスクリートGPUを搭載した15インチモデルとなると、Blackmagic eGPUで2.3倍、Blackmagic eGPU Proで3.8倍のパフォーマンス上昇率で、13インチモデルほどパフォーマンスは上昇しないことがわかる。
もちろん2.3倍・3.8倍の上昇率は決して低いわけではないが、Blackmagic eGPU Proに至っては税抜き149,800円もするため、それだけの金額を出して3.8倍の上昇率というのは割に合わないように思う。
もしディスクリートGPU搭載MacでeGPUを導入するのであればRadeon Vega 64やRadeon 5700 XTなどのかなりの性能を持ったGPUを導入しなければ大幅なパフォーマンスアップは見込めないだろう。
個人的にはディスクリートGPU搭載Macにおいてはよほどグラフィックパフォーマンスが欲しい場合を除いて、eGPUを導入するのはコスパが悪いと思っている。
eGPUが必要かどうかの目安表

僕個人が独断で選定したそれぞれのMacにおけるeGPUの必要性や性能向上が見込めるGPUの目安を表にしてみた。
Mac ProやiMac Proに関してはeGPUが不要なのは誰が見ても明確なので省いている。
また、MacBook Airに関してはCPU性能が低いためeGPUを接続してもCPUがボトルネックとなる可能性があるため「適宜」としている。
製品名 | eGPU必要性 | 大幅性能向上が見込めるeGPU(GPU) |
MacBook Air | 適宜 | Blackmagic eGPU・Radeon RX 470〜Radeon RX 5700 XT 50th Anniversary |
MacBook Pro 13 | 必要 | Blackmagic eGPU・Radeon RX 470〜Radeon RX 5700 XT 50th Anniversary |
Mac mini | 必要 | Blackmagic eGPU・Radeon RX 470〜Radeon RX 5700 XT 50th Anniversary |
MacBook Pro 16 | 適宜 | Radeon RX 5700・Radeon RX 5700 XT・50th Anniversary |
iMac 4K | 適宜 | Radeon Vega 64・Radeon Pro WX 9100・Radeon RX 5700・Radeon RX 5700 XT・50th Anniversary |
iMac 5K | 適宜 | Radeon Vega 64・Radeon RX 5700・Radeon RX 5700 XT・50th Anniversary |
eGPUとして使用するグラフィックカードに迷ったら?

eGPUを導入する際にどのGPUを組み込めばいいのか迷った場合はPassMarkのGPU性能チャートがわかりやすいので、このチャートを見た上で個々のMacのGPU性能と比較して選ぶと良いと思う。
注意点として現行のmacOSではRadeonしか搭載できないのでGeForceのスコアは無視しよう。
またAppleがeGPUとして推奨するRadeon GPUは下記のリストに掲載されているモデルのみ。
- Radeon RX 470
- Radeon RX 480
- Radeon RX 570
- Radeon RX 580
- Radeon Pro WX 7100
- Radeon RX Vega 56
- Radeon RX Vega 64
- Vega Frontier Edition Air
- Radeon Pro WX 9100
- Radeon RX 5700(macOS Catalina 15.1以降)
- Radeon RX 5700 XT(macOS Catalina 15.1以降)
- Radeon RX 5700 XT 50th Anniversary(macOS Catalina 15.1以降)
まとめ
eGPUが必要になるかどうかは個人の使い方にもよるので難しい面もあるが、少なくともCPU内蔵グラフィックのMacを使っている人は確実に幸せになれる。
macOS MojaveやCatalinaの度重なるアップデート&改善によってeGPUの動作の安定性も上がってきているため、CPU内蔵グラフィックのMacをメインマシンとしてバリバリ使うのであれば確実に恩恵を受けられると断言できる。
逆にiMacやMacBook Pro 15または新世代の16インチモデルを使っているのであれば、GPU・eGPUボックス共にかなりのお金がかかるためコスパは悪くなる。
ただ、ディスクリートGPUを搭載しているからといってeGPUの導入が全く無意味というわけでもなく、適切なGPUを選べばパフォーマンスは確実に上がるため、現状のディスクリートGPUに満足できないのであればコスパは悪いものの導入するのも選択肢としてありだろう。