ややこしいThunderbolt 3の仕様

Thunderbolt 3はIntelとAppleによって共同開発されたデータ転送技術であるが、同じThunderbolt 3でもMacによって仕様が違うのはあまり知られていない。

Thunderbolt 3の概要

Thunderbolt 3は2015年に発表され、2016年のMacBook Proから搭載されているが、ディスクリートGPUを搭載せず、CPU内蔵グラフィックのみのMacBook Pro 13インチモデルでは2018年モデルでない限り、全てのポートでThunderbolt 3の真価を発揮することはできない。

というのもThunderbolt 3は同じThunderbolt 3であっても、”CPUのバージョン””コントローラのバージョン”で仕様が異なるからだ。

CPUのサポートするレーン数による違い

Thunderbolt 3はPCI-Expressのプロトコルを使っているため、CPU内蔵グラフィックのみのMacは当然のことながらCPUがサポートするレーン数の影響を受ける。

ディスクリートGPUを搭載するiMacやMacBook Pro 15インチモデルでは問題にならないが、2017年までに発売されたMacBook Pro 13インチTouch Barモデルなどでは例え4つのThunderbolt 3ポートを搭載していても、CPUのサポートするレーン数が足りず、2ポートでしか最大パフォーマンスを発揮できないといった制限がある。

The two ports on the right side of the machine have Thunderbolt 3 functionality but with reduced PCI Express bandwidth. For that reason, Apple recommends plugging higher-performance devices into the left-hand ports on that machine.

右側のThunderbolt 3ポートはPCI-Expressのレーン数不足のため、ハイパフォーマンスデバイスは左側のポートで使用することをAppleは推奨している

MacRumors

このレーン数の制限がなくなったのは2018年に発売されたMacBook Pro 13インチモデルからであり、それ以前のMacBook Pro 13インチでは帯域の制限が存在する。

Thunderbolt 3コントローラによる違い

また、同じThunderbolt 3であっても搭載しているコントローラがMacの発売された時期によって違うため、内部仕様も異なる。

2016〜2017年までのMacのThunderbolt 3コントローラは”Alpine Ridge”と呼ばれるバージョンであり、内部仕様はDisplayPort 1.2に留まる。

一方2018年にリリースされたCPUに搭載されているThunderbolt 3コントローラは”Titan Ridge”となり、DisplayPortのバージョンが1.4に上がっている。

このため、Alpine Ridge止まりのMacでは、Thunderbolt 3からの映像出力はDisplayPort 1.2の帯域に制限されてしまう可能性がある。

ただ、一部のMacコンピュータではDisplayPort 1.2の帯域であっても5KディスプレイをサポートするMacが存在するため、Appleによる特殊な方法で5Kディスプレイの出力をサポートしているのかもしれない。

2014年にリリースされたiMac 5Kは、海外のMacコミュニティでどうやって5Kディスプレイを実現させたのか話題になっていたが、どうやら内蔵GPUやI/Oが5Kに非対応であっても、DisplayPort 1.2を内部で束ねて5K@60Hzを実現していたようだ。

とはいえ、DisplayPortのバージョンが最新なのに越したことはない。

また、注意点としてMac mini 2018やMacBook Pro 13インチ 2018以降のMacであってもCPU内蔵グラフィックしか搭載していないMacの場合は、CPU内蔵グラフィックの対応解像度が最大4K、DisplayPortが1.2止まりであるためThunderbolt 3コントローラーのDisplayPortは1.4対応であるものの、そのままでは5Kなどの解像度は表示できない。

例外として、どういうわけかAppleオンラインストアで販売されているLG UltraFine 5KディスプレイはCPU内蔵グラフィックでも5Kが表示可能(特別製のディスプレイであるため、何らかの特殊な方法を使っていると思われる)。

上記のような例外を除けば、基本的にはCPU内蔵グラフィックしか搭載していないMacで5Kや6Kの出力を行うにはDisplayPort 1.4に対応したeGPUなどを導入する必要があるという認識でいい。

DisplayPort 1.4(Titan Ridge)のThunderbolt 3で可能なこと

DisplayPort 1.4は最新のDisplayPort規格であり、これまでの主流であったDisplayPort 1.2から帯域が大きく上がり、最大32.4Gbpsの伝送速度に達するため、4K@120Hz8K@60hzの出力が可能になる。

Appleが6月、民生用向けでは恐らく初めてとなる6KディスプレイPro Display XDRを発表したがTitan Ridge搭載のThunderbolt 3なら6Kの帯域も余裕で伝送可能だろう(帯域は足りていてもAppleのサポート状況に左右される可能性はあり)。

TItan Ridgeコントローラ搭載のMac一覧

現時点でTitan Ridgeを搭載したThunderbolt 3搭載Macは下記のようになる。

  • iMac 2019
  • MacBook Air 2018
  • MacBook Pro 2018
  • Mac mini 2018
  • iMac Pro 2017
  • iMac 2017?

iMac 2017については、搭載されているRadeon GPUがTitan Ridge搭載なのか不明なため”?”としている。

なお、上記のMacはTitan Ridge搭載ではあるものの、前述のようにMac mini 2018とMacBook Air 2018、MacBook Pro 2018ではCPU内蔵グラフィックしか搭載していないため、Thunderbolt 3のコントローラ自体はTitan Ridgeだがそのままでは5Kや6Kの表示はできない。

Blackmagic eGPU及びBlackmagic eGPU ProなどのThunderbolt 3ポートはTitan Ridge搭載のため、Blackmagic eGPUやDisplayPort 1.4対応のeGPUを接続すれば、CPU内蔵グラフィックのみのMac mini 2018、MacBook Air 2018、MacBook Pro 2018であっても5K以上の出力が可能になる。

Blackmagic eGPUのTitan Ridge搭載については下記が詳しい(英語)

eGPU.io-[Unboxing & Teardown] Blackmagic eGPU Radeon Pro 580 Thunderbolt 3 Enclosure 

まとめ

Thunderbolt 3はそもそもUSB-CのAlternate Modeと呼ばれるモードの一つであり、タダでさえ非常にややこしい仕様なのだが搭載されているコントローラによっても仕様が違ってくるという、面倒なポートになっている。

ただ、2019年時点で覚えておくといいのは”2018年以降に発売されたMacは全てTitan Ridge搭載のため、Thunderbolt 3の真価をあますところなく発揮できる”ということだ(前述のようにCPU内蔵グラフィックのMacでは5K以上が表示できないなどの問題はある)。

微妙なラインに置かれているのは2016〜2017年に発売されたiMac Proを除くMac(ディスクリートGPU搭載モデルを含む)で、これらはThunderbolt 3を搭載しているもののコントローラがAlpine Ridge止まりのため、今後のディスプレイ市場の変化に対応できない可能性がある。

Thunderbolt 3は総帯域40Gbpsという他のポートを寄せ付けない帯域を誇っているが、いささかその仕様が複雑で完全に初見殺しである。

そもそもUSB 3.1 Gen2基準なら10Gbps、DisplayPort 1.4/PCI-E 3.0 x4レーン基準なら32.4Gbpsであり、それぞれの帯域が異なっている。

40Gbpsというのはあくまで総帯域幅を表しており、一部の帯域はエンコードなどの信号を伝送するのに使用されるため、実効帯域幅は総帯域幅より必然的に低くなる。

Appleには正直、もう少しThunderbolt 3の仕様の違いを明確にわかりやすく表記して欲しいと思う。