Blackmagic eGPU(Radeon Pro 580モデル)をMac mini 2018で使用して1ヶ月近く経ったので、Blackmagic eGPUでどの程度Mac miniのパフォーマンスが上がるのか検証してみよう。
INDEX
検証環境
環境はMac mini 2018をメモリ16GB、SSD512GB、CPUをi7 6コアにカスタマイズしたCTOモデル。
LGの4KモニターにDisplayPortで接続して、3008x1692の擬似解像度で使用している。
Blackmagic eGPUの効果が高いアプリ・タスク
Photoshop

これはAppleのBlackmagic eGPUの紹介ページでもパフォーマンスが大幅にアップすると紹介されているだけあり、Mac miniの内蔵グラフィックとは比べ物にならないくらい快適になる。
メインメモリの容量にもパフォーマンスが左右されるPhotoshopではあるが、メインメモリ16GBの環境であっても、Blackmagic eGPUと組み合わせればパフォーマンスは格段に上がる。
高解像度の写真を開き文字を入れる、ドラッグアンドドロップでレイヤーを移動・拡大縮小するなど、基本的なタスクでも内蔵グラフィックではカクカクとした動きが一気に滑らかになる。
Parallels Desktop 14 Pro Edition

続いては仮想マシンソフトウェアのParallels Desktop 14。
僕は最新版のParallels Desktopを使用しており、このバージョンのParallels Desktopでは、eGPUを接続した状態でWindowsを起動すると初回起動時にParallels Toolsが自動的にWindowsにインストールされ、WindowsがeGPUに最適化される。
そのためParallels DesktopもPhotoshopなどと同様にeGPUの恩恵を享受することが可能だ。
というよりPhotoshop以上にeGPUの効果を実感したのがこのParallels Desktopだった。
今までは重かったWindowsの動作がキビキビとしたものになり、WindowsをParallelsで動かしながらmacOS側で別のタスクを実行するということも問題なく出来るようになる。
ゲームについてもノベルゲームやインディーズゲームなど、負荷が軽いものであれば難なく動作する。
ただしWindows側の解像度を上げると相応の負荷がかかるので、Windowsの解像度はフルHD、最高でも2560x1440のWQHDまでにしておいた方がいいだろう。
ちなみに現時点でBlackmagic eGPU Radeon Pro 580モデルなどのMac向けにカスタムされたeGPUはBootcampで動作せず、Blackmagic eGPU以外ならBootcampでもパフォーマンス上昇が望めるがAppleはBootcampでのeGPUの使用はいかなるeGPUであろうとも非推奨・非サポートのため、Parallels Desktopを利用する方が安心だ。
Parallels DesktopでのeGPUの詳しいパフォーマンスについては、下記の記事でベンチマークなどを掲載しているので参考にしてほしい。

ゲーム
eGPUをゲーム目的でMacで利用する人は少数だと思うが、数年前のゲームなら最高設定でもそれなりのゲームをプレイすることは可能だ。
試しにMacに対応しているCall of Duty Modern Warfare 3を最高設定で遊んでみたが、擬似解像度3008x1692という負荷が高い解像度であっても、ゲーム側の設定解像度が1920x1080程度ならプレイするのに支障はなかった。
Blackmagic eGPU(Radeon Pro 580)のMacでのゲームパフォーマンスは以下の記事で詳しく検証しているので、よければ参考にしてほしい。

macOSのUI
当たり前ではあるが、macOSのインターフェース・アプリはeGPUに最適化されており、全てのタスクにおいてeGPUを接続することによって爆発的なパフォーマンスの改善が見込める。
写真アプリでの写真の編集、Launchpadの表示、Finder表示、ブラウザ上での動画再生などあらゆる面でパフォーマンスが向上する。
擬似解像度も3008x1692程度であれば十分に快適な動作になる。
Blackmagic eGPUの効果があまりないアプリ・タスク
Lightroom

写真を嗜んでいる人なら誰もが利用するであろうLightroomであるが、こちらはeGPUの効果がほとんど感じられない。
”かなり高速になっった”というレビューもちらほら見かけたのだが、Photoshopほどの快適さは感じられない。
確かにプレビュー表示の高速化や、擬似解像度を上げた状態での操作は快適になるが、現像時間やエフェクトの処理は内蔵グラフィックとほとんど差がなく、eGPUのパフォーマンスアップは極めて限定的。
Lightroomは元々CPUの性能やコア数が重要なアプリであり、グラフィック性能はあまり関係ないようだ。
CPUの性能が低ければeGPUの効果も上がるのかもしれないが、6コアi7などのそれなりのCPUだとeGPUの効果はイマイチなように思う。
Bootcamp
こちらは前述の通り、そもそもeGPU自体がBootcampではサポートされていないこともあって動作は不安定であり、パフォーマンスアップ云々の前にまともに使えない。
Blackmagic eGPUはRadeon Pro 580というMac向けに最適化された独自仕様のGPUであるため、対応しているドライバもなく、Bootcamp上のWindowsではまともな動作は期待できない。
Blackmagic eGPU以外でならBootcampでもeGPUは動作可能だが前述のようにAppleはBootcampでのeGPUの使用は非推奨・非サポートであり自己責任となるので、Windows環境でバリバリ3Dゲームをやりたいという場合を除きあまりおすすめはしない。
Blackmagic eGPUを導入してもほぼ意味がないMac
Blackmagic eGPUはそもそも、グラフィック性能に限界がある内蔵グラフィックを搭載したMacにおいてのパフォーマンスを底上げするものであって、MacBook Pro 15インチモデルなど、相応のGPUを搭載したMacではeGPUを導入してもほとんど意味がない。

上記はVideocard BenchmarksのPassMarkでのGPUのスコア画像であるが、Radeon Pro 580のスコアは7753であり、突出してスコアが高いGPUではない。
例を上げるとMacBook Pro 15インチの2018年モデルで選べる最高GPUはRadeon Pro Vega 20であるが、チャートを見ると分かる通りRadeon Pro 580はVega 20より1600程度スコアが高いだけであり、性能差はほぼない。
そのためMacBook Pro 15インチやiMacなどのそれなりのGPUを搭載したMacではBlackmagic eGPUを使用しても大したパフォーマンスアップは望めないだろう。
まとめ
以上のようにBlackmagic eGPUはアプリケーションやMacによってはパフォーマンスアップがあまり感じられない場合もあり、万能とは言えない。
Blackmagic eGPUの真価が発揮されるのはあくまで内蔵グラフィックの性能が低いMac mini 2018やMacBook Pro 13インチ、MacBook Airなどであって使用しているアプリやMacによってはeGPUの恩恵がほとんどない場合もある。
Blackmagic eGPUの購入に際しては自身がよく使うアプリケーションや、自分のMacの性能を鑑みて決めることが大事だ。
自分のMacがそれ相応のGPUを搭載している場合で、更なるパフォーマンスアップが必要ならeGPU(Radeon Pro 580)ではなくeGPU Pro(Radeon RX Vega 56)やサードパーティーのeGPUボックスを買って性能が高いグラフィックボードを導入した方がいい。
参考までにVideocard BenchmarksのeGPU Pro(Radeon RX Vega 56)のPassMarkスコア。

Blackmagic eGPU(Radeon Pro 580)が7753のスコアだったのに対してeGPU Pro(Radeon RX Vega 56)のスコアは11707であり、GTX 980 TiやGTX 1660 Tiよりスコアが高く、GTX 1070 Tiや1080に迫る性能となっている。
Blackmagic eGPU Proは税抜き14万9千円という非常に効果なeGPUではあるが、GTXの一世代前の上位モデルに迫るスコアを叩き出すのはすごい。
ただ、さすがにGPUの交換が不可能なBlackmagic製品に14万9千円というのは高すぎるので、同等の性能が欲しければやはりサードパーティーのeGPUボックスを買って中古のRadeon Vegaなどを入れた方が費用対効果は高いように思う。