
仮想マシン構築ソフトウェア”Parallels Desktop”の最新バージョンではWindows環境においてのeGPUをサポートしており、Parallels Desktop内でのWindowsでもeGPUの恩恵を受けることが出来るが、Mac mini 2018とBlackmagic eGPU(Radeon Pro 580)とParallels Desktopを組みわせて使用する上での最適な設定を考えてみる。
なお、Parallels DesktopでのeGPUのパフォーマンスについては下記の記事で詳しいベンチマークなどを掲載している。

INDEX
Parallels Desktopについて

本題に入る前の注意点として、Parallels DesktopはMac App Store版と公式サイト版があるが、Mac App Store版のParallels Desktop Liteは機能が制限されている上に、公式サイト版とも価格がそれほど変わらないため、Parallels Desktopを購入する際は”必ず”公式サイト版を購入しよう。
公式サイト版のParallels Desktopではコヒーレンスモードというのを搭載しており、Windows側のソフトウェアを個別のウィンドウとしてmacOS側で利用でき、あたかもWindowsのアプリがmacOS上で動いているかのような振る舞いが可能になる。
Mac App Store版のParallels Desktop Liteにはコヒーレンスモードは非搭載であり、他にも多くの機能が削られている。
なお、公式サイト版のエディションについてはParallels Desktop Pro Editionをおすすめする。
通常版のParallels Desktopでは割り当てられる仮想RAMは8GB、仮想CPUは4CPUまでという制限があり、極端に重いアプリをバリバリ使う場合は通常版で割り当てられる仮想RAMや仮想CPUでは足りない可能性が出てくる。
無料サポート期間の点も考慮すると通常版よりPro版の方が安心だろう。
ちなみにParallels Desktopは14日間の無料トライアルもあるので、eGPUによるパフォーマンスアップがどの程度か購入する前に検証したい場合は、まずは無料トライアルを利用してみるのがいいだろう。
Parallels Desktop 14はeGPUをサポート
以前のバージョンの環境を持ち合わせていないので、検証は不可能であるが少なくとも最新のParallels Desktop 14ではMacにeGPUを接続していると、Parallels DesktopでWindowsを最初に起動した際にParallels Toolsが自動的にインストールされ、WindowsがeGPUに最適化される。

なお、Windows側でGPU情報を表示させようとすると、GPU-Z(GPU情報表示アプリ)などの専用ソフトウェアでも一切GPUの情報が表示されなくなるため、恐らくParallels Desktop側でGPU情報を欺瞞させていると思われる。
ちなみに僕が使っているのは高機能版のProエディションであるが、Pro以外でもWindowsでのeGPUの振る舞いは変わらないはず。
Parallels Desktop 14の設定
CPU&メモリ

CPUの設定は、Mac mini 2018の6コア i7版ではHyper ThreadingによりCPUのスレッド数は12個となるが、Parallels Desktopでは僕は2つのみ割り当てている。
Parallels Desktop 14の推奨が2つというのも理由だが、そもそも僕はParallels Desktopで重いアプリを使用するわけではないというのが大きい。
仮に何らかのゲームをプレイしたとしても、軽いゲーム(Steamのインディーズゲームやノベルゲーム)であればプロセッサの割り当ては2つで構わない。
ただ、Parallels Desktopでバリバリとヘビーなソフトウェアを使用する場合は割り当てプロセッサの数を4〜6つ程度まで増やしてもいい。
なお、Parallels Desktopの設定では物理コアと論理コアを区別しないので、やろうと思えば12スレッドのMac miniだと12個までのプロセッサを割り当てることが出来る(当然おすすめはしない)。
メモリについてはMacにどれだけメモリが載っているかで変わってくる。
僕のMac mini 2018がメモリ16GBだった頃は、割り当てを1GB(1024MB)までに減らしてもmacOSと合わせるとメモリ使用量はカツカツであったが、32GBに増設した今では2〜4GB程度をWindowsに割り当てても支障はない。
とはいえ、やはり重いアプリを使用するというわけでなければ割り当ては1GBでも問題はないと思う。
軽いゲームの場合でも2GBあれば十分だろう。
一つの目安として
使用Macの搭載メモリ16GB以下の場合:1〜2GB割り当て
使用Macの搭載メモリ32GB以上の場合:2〜4GB割り当て(重いアプリやゲームの場合それ以上割り当て)
上記を適宜設定すると良いと思う。
グラフィック
悩ましいのがグラフィックの設定だ。
メモリ(ビデオメモリ)の割り当ては自動でいいとして、4Kや5KディスプレイにMac miniを接続している場合は3つのディスプレイ解像度の選択肢が存在する。

選べるディスプレイ解像度の設定は画像の通り。
- Retinaディスプレイに最適
- サイズ調整される
- 外部ディスプレイに最適
以上の3つとなる。
4Kや5Kディスプレイを擬似解像度で利用しているなら”Retinaディスプレイに最適”を選べばいい気もするが、実際にこの設定を選ぶとWindows側のスケーリング設定もParallels Desktopが強制的に変更し、Windows側ではスケーリング設定を弄れなくなってしまう。
結果的にWindowsで使用するアプリやゲームはmacOS側で引き延ばしたものを更にWindows側が引き延ばすということになり、かなりアプリやゲームの見た目が荒くなる。
加えてmacOS側もWindows側もスケーリング処理が入ることにより、極めてパフォーマンスが落ちる。
結果的に僕が落ち着いた選択肢は”サイズ調整される”だ。
”外部ディスプレイに最適”でもParallels Desktopのスケーリング強制変更は回避出来るが、今度はWindows側は4Kや5Kディスプレイのデフォルト解像度(4Kディスプレイなら3840x2160、5Kディスプレイなら5120x2880)で描画してしまい、Windows側で解像度を変更し直すとウィンドウサイズが妙なことになり、macOS側の描画が非常に小さくなりWindowsの文字が極めて読みにくくなる。
”サイズ調整される”の設定であればParallels DesktopのウィンドウサイズがそのままWindows側の解像度に設定されるので、Windows側の解像度を1920x1080程度に設定してスケーリングを100%のままにすればmacOS側でもWindows側でも、文字やアプリ、ゲームの見た目が最も良くなる。

Macに4Kや5Kディスプレイを接続して擬似解像度を利用しているなら、Parallels Desktopのディスプレイ設定は”サイズ調整される”に設定して、Windows側の解像度は1920x1080程度、スケーリングは100%にするのが一番だ。
なお、上記の設定を以ってしても擬似解像度で使用しているMacではWindows側の表示が若干荒くなるのはどうしたって避けられない。
Windowsの表示を極限までクリアにさせたい場合はmacOSのディスプレイ設定で擬似解像度をオフにすればいいが、その場合はmacOSの描画はディスプレイのネイティブ解像度になるため、文字も小さくなり現実的ではないし、MacBook Proなどの一部のMacではそもそも擬似解像度をオフに出来ない。
擬似解像度(Retina)の仕様上、Windowsの表示が若干荒くなるのは諦めるしかない。
まとめ
eGPUとParallels Desktop最新版との組み合わせは特にトラブルもなく、パフォーマンスの面でも多くのアプリや軽いゲーム程度なら問題なく動作する。
ただ、eGPUとは直接関係ないがディスプレイのスケーリング処理が悩ましい。
擬似解像度(Retina)とWindows側のスケーリングに上手く折り合いをつけなければいけないため、Windows側でもmacOS側でも表示が綺麗で、かつ現実的なパフォーマンスを得られる設定を見つけるのが難しかった。
また、Blackmagic eGPU(Radeon Pro 580)モデルの性能は中の上程度で、macOS側とWindows側両方でスケーリング処理がされると、少なくともRadeon Pro 580モデルでは性能不足となり、スケーリング処理に耐えられなくなってしまう。
とはいえ、Parallels Desktop最新版とeGPUの組み合わせは(仮想マシンソフトウェアとしては)極めてパフォーマンスが良く、CPU内蔵グラフィックとは比べ物にならないくらいParallels Desktopの動きが良くなる。
僕個人の意見としてParallels DesktopのためだけにeGPUを導入しても良いくらいだと思う。
それほどParallels DesktopとeGPUの組み合わせはパフォーマンスが上がる。
上に紹介した設定で利用すれば多くのアプリや軽いゲームは快適に動作するはずだ。