Apple Silicon Mac購入に向けての注意点と展望

管理人は現在Mac mini 2018及びMacBook Pro 13" Mid 2019を使用しており、当然どちらもIntel Macであり、現在リリースされているApple Silicon(M1)搭載Macは一つも持っていない。

少なくとも来年2021年にはデザインが刷新された場合はiMac、あるいはMacBook Pro 16"のApple Silicon Macを購入する予定でいる。

本記事では以前のApple Siliconについての記事の続きとして、管理人がApple Silicon Macにおいて懸念している事柄を書いていきたい。

ARM Macで何が変わる?性能とBoot Camp、eGPUの将来

Apple Silicon Macへの懸念点

Boot Campの利用不可

以前の記事でも書いた通りApple Silicon MacではBoot Campは非サポートであり、少なくともx86版Windowsは動作しない。

一部の海外メディアの記事で「有志の手によりApple Silicon MacでWindowsを動作せることに成功した」という報道がされたが、それはあくまで「ARM版Windows」の動作の成功であり、管理人が知る限りにおいてx86(x86-64)版WindowsをApple Silicon Macで動作させたというニュースは耳にしていない。

GIGAZINEの記事ではARM版Windowsでx86 32bitアプリケーションをエミュレーションで動作させたと書かれているが、MicrosoftがARM版Windowsでのx86のエミュレーション機能を発表したのは最近(2020年9月30日)であり、安定性は未知数な点が多い他、仮にMacで動いたとして「仮想化したWindowsで更にアプリケーションを仮想化して動かす」ということになるため、安定性や互換性に大いに不安が残る。

参考 Apple Silicon搭載MacでWindowsを正常に動作させることに成功GIGAZINE

x86とARMではアーキテクチャが全く違うため、x86版のWindowsがARMアーキテクチャであるApple Silicon搭載Macで動作しないのは当たり前の話ではあるが、今後も恐らくParallels DesktopなどのサードパーティーソフトウェアであったとしてもApple SiliconのMac上で従来のx86版WindowsをBoot Campと同じような安定性とパフォーマンスで動作させることは恐らく不可能に近いか、実現できるにしても今すぐにというわけにはいかないだろう。

更にAppleはARM版WindowsであったとしてもそれらをApple Silicon Macで動作させるBoot Campのような仕組みを用意していない。

ARM版WindowsをApple Silicon Macで動作させることは有志の手によっても出来るくらいなのだから、Appleもやろうと思えばARM版WindowsのApple Silicon Macでのサポートくらいは可能なのだろうが、Microsoftのライセンスの問題が絡んでいると思われているため今のところAppleが正式にARM版Windowsをサポートするといった動きはない。

現状ではApple Silicon Macを導入する上で「Windows」という存在は無視しなければいけない状況になっていると言える。

Macの陳腐化が早くなる

続いての懸念点としてMacがApple Siliconへと移行することにより、Macの世代ごとに性能差が大きくなるということが考えられる。

現状のIntel Macは乱暴な言い方をすればコア数やスレッド数が同じであるのならば2015年のIntel Macも2020年のIntel Macもそこに劇的な性能差はない(T2チップの有無によるHEVCエンコードの速さ、SSDの高速化といった違いはある)。

しかしiPhoneやiPadのApple AシリーズSoCなどのAppleのデザインによるチップは1年に1世代更新され、場合によっては1年前のAシリーズチップと現行のAシリーズチップで劇的な性能差が現れることも少なくない。

画像出典 Apple

例えば2015年のiPhone 6sに搭載されたApple A9チップと2020年のiPhone 12に搭載されたApple A14チップでは両者に劇的な性能差がある上に、近年のApple AシリーズチップはNeural Engineの搭載により機械学習にも長けている。

画像出典 Geekbench
5年前のiPhone 6s(A9)と現行のiPhone 12(A14)との比較(マルチコア)

前述の通りIntel Macであれば2015年製だろうが2020年製だろうが、コア数が同じであるのならばApple Aシリーズチップのような劇的な性能差はないが、MacがApple Siliconという自社製チップへと移行することにより、1年ごとにMacの性能に大きな開きが生じる可能性がある。

加えてIntelはプロセスルールの微細化に失敗し続けており、未だにプロセスルールが10nm止まりなのに対してAppleデザインのチップを製造しているTSMCは既に5nmまでプロセスの微細化に成功しており、現在は3nmや2nmの研究段階にある(Apple A14チップは5nmチップの嚆矢となるチップでもある)。

つまりApple AシリーズSoCのような流れがMacにも訪れるのであれば従来にも増してMacは世代ごとの性能差が開き、Macの陳腐化が早くなる可能性がある。

参考までに現在のiPad ProのA12Zチップは数値上はXbox OneやPS4などの前世代ゲーム機の演算能力を上回っている。

Apple Siliconへの移行中はMac選びが難しくなる

これはApple Siliconに完全に移行するまでの問題となるが、現在Macを購入する上でどのモデルを選ぶのか、ということが難しくなっている。

Appleは2020年6月、今後2年かけてApple Siliconへと移行するとはっきりと明言し、事実MacBook AirはApple Silicon(M1)に置き換わり、MacBook Pro 13"やMac miniもIntelモデルも選べるもののAppleはApple Silicon搭載Macを重点的にアピールしている。

画像出典 Apple
MacBook Pro 13"やMac miniではM1かIntel版を選べるようになっている

プロセッサやハードウェアについて知識がある人ならば適切なMacを選択することが可能だろうが、多くの一般の人たちはARMやx86といったアーキテクチャの違いを把握していない。

実際管理人は何人かの知人から「メモリとストレージの違いがわからない」、「ARMってなんですか?」という質問を受けることがある。

自惚れるつもりはないし、そういったプロセッサなどのハードウェアについて詳しくない人を見下すつもりもない(管理人もエンジニアなどではなく素人だ)。

むしろコンピュータというものは詳しくない人でも自分のやりたいことが出来るのが理想だと思っている。

ただ、そういった人たちにとって「IntelモデルとApple Silicon Macが並行して販売されている」という現状は混乱を招きやすいだろう。

管理人の個人的な友人はApple Siliconへの移行をAppleが発表した後「よくわからないからIntelの方を選ぶ」と言ってBoot Campでx86版Windowsを利用するわけでもないのに初めてのMacとしてIntel版MacBook Airを購入してしまっている。

実際のところは現在のApple Silicon(M1)Macは8コアのIntel MacBook Pro 16"の性能すら凌駕しているため「よくわからないからIntel Macを選ぶ」といった選択は価格とパフォーマンスの両面で後々後悔することになりかねない(もちろんApple Siliconのような初物のMacは不安だからIntel Macを選ぶという場合もあるだろうが)。

画像出典 Geekbench
Apple Silicon Macの性能はIntel Mac Pro Late 2013やMacBook Pro 16" 2019をも凌駕している(マルチコア)

逆にBoot Campや仮想環境でx86版Windowsを利用したい人はIntel Macを選ぶ必要があり、現在のMacのラインナップは混乱しやすいものとなってしまっている。

AppleもIntel Macを必要とする人のためにIntelモデルを併売しているのだろうが現在のMacのラインナップは「性能やワットパフォーマンスに優れるMac」と「(主にWindowsとの)互換性に優れるMac」という二つが存在している状態であり、コンピュータに詳しくない人にとってはどちらが自分の使い方に合っているか選択を誤る可能性がある状況だ。

Rosetta 2の役割が終わった時、非対応のアプリケーションは切り捨てられる

画像出典 Apple

AppleがMacのPowerPCからIntelへの移行を発表した2005年、現在のmacOS Big Surに搭載されている「Rosetta 2(一種のx86→Apple Siliconへのエミュレーション機能)」のオリジナルと呼べる「Rosetta(以下Rosetta 1)」という仕組みがMac OS X Tiger 10.4に用意された(Rosettaという名称の由来はロゼッタストーン)。

これは現在のApple Siliconを取り巻く状況と同じように従来のPowerPCネイティブのアプリケーションをIntel Macでも動作させるという互換性維持のために用意された仕組みだ。

ただ、このRosetta 1はPowerPCからIntelへと移行が終了したと判断された2011年のMac OS X Lionで廃止されている。

つまりRosetta 1の登場からおよそ6年でPowerPCアプリケーションは過去のものとなり、極端な言い方をすれば切り捨てられたということになる。

Appleは現在のRosetta 2がいつまでmacOSに搭載されるのかアナウンスはしていないが、Rosetta 1と同様に5〜6年程度で同様に廃止されると見ている。

Rosetta 2が廃止された時、大半のアプリケーションはApple Siliconをサポートしているはずだが、もしIntel Mac用の古いアプリケーションを長年に渡って愛用している場合はそういったアプリケーションは切り捨てられてしまうことになる。

2020年時点においてもOffice 2011などの古いアプリケーションを利用し続けている人はいるため、期間が空いたからと言って誰にも関係がない問題となるわけでもない。

まとめ

将来のApple Silicon Macがどのような進化を果たしていくのか、ARM版Windowsが正式に動作するようになるのか、それはまだ現時点ではほとんど推測の域を出ないが、確かなのは現在Macというカテゴリーは過渡期にあり一部のユーザーにとっては少々混乱しやすい状況となっているということだ。

Apple Silicon Macの購入を考えている場合、特に長く使うMacとして購入しようとしている場合は本記事でまとめた懸念点を念頭に慎重に選んでほしいと思う。

特にBoot CampやParallels Desktopなどでのx86版Windowsの使用を考えている場合は性能と互換性を秤にかけて熟考しないと購入後に選択を後悔する可能性が大いにある。

管理人は今まで新しいMacを購入した場合は古いMacを買取に出していたがApple Silicon Macを購入した際は現在使用しているIntel Mac miniやIntel MacBook Pro 13"は互換性を考慮し、更に検証用として買取には出さず半永久的に手元に置いておくつもりだ。