
macOS Catalinaでは4K HDRをサポートすることがアナウンスされていたが、macOS Catalinaリリース当初はiMac ProやPro Display XDR以外では4K HDRコンテンツは鑑賞できず、外部4K HDRモニターなどを接続してもHDRが有効にできないという問題が存在した。

しかし2020年3月25日(日本時間)にリリースされたmacOS Catalina 10.15.4からはモニターとMacのハードウェアがHDRをサポートしていれば新たにディスプレイの設定に「ハイダイナミックレンジ」という設定が追加され、一般的な4K HDRモニターでも4K HDRコンテンツを鑑賞することが可能になっている。
本記事ではmacOS CatalinaでHDRコンテンツを鑑賞する際の条件や設定、実際に4K HDRコンテンツをTVアプリで鑑賞した所感をまとめる。
なお。下記記事ではNetflixを含め、iPhoneやiPadなど各AppleデバイスでHDRコンテンツを鑑賞する際の方法を詳しく解説している。

INDEX
macOS CatalinaでTVアプリのHDR映画を試す
AppleのmacOS Catalinaにおける4K HDRの条件

まず最初にmacOS Catalinaで4K HDRコンテンツ(またはHDRコンテンツ)を鑑賞する条件をまとめよう。
Appleのサポート情報及びmacOS Catalina 10.15.4を利用した管理人の経験を基にすると4K HDRコンテンツやHDRコンテンツを鑑賞するには以下のMacやモニターが必要である。
4KでHDRコンテンツを見れるMac
- iMac Pro 2017
- iMac 2020
- 4K HDR対応外付けモニターやPro Display XDRに接続したMac Pro 2019(macOS Catalina 10.15.4以降)
- 4K HDR対応外付けモニターにDisplayPortで接続したMacBook Pro 2018以降(macOS Catalina 10.15.4以降)
- Pro Display XDRに接続したMacBook Pro 2018以降(macOS Catalina 10.15.4以降)
1080pでHDRコンテンツが見れるMac
- MacBook Pro 2018以降の内蔵ディスプレイ
- MacBook Air 2018以降の内蔵ディスプレイ
- MacBook Pro 2018以降にアダプタのHDMIで接続した外付けディスプレイ
- HDR対応モニターを接続したMac mini(macOS Catalina 10.15.4以降)

以上を踏まえると僕の「Mac mini 2018+4K HDRモニター」の組み合わせでは4K HDRコンテンツを再生しても、HDRでは再生されるが解像度は1080pになるということになる。
また、「MacBook Pro 2018以降と外付け4K HDRモニター」を組み合わせる場合はHDMIではなくDisplayPortで接続しないと4K HDRにならないため注意が必要だ。
更に外付け4K HDRモニターの場合はPro Display XDRを除いてHDR 10での再生となり、Dolby Visionには対応しないようだ。
しかし、AppleのHDR関連のサポートページは情報が錯綜している状態で、あちこちに矛盾する説明があるため、Apple公式とはいえ上記の情報が本当に正しいのかは判然としない。
独自にまとめた4K HDR対応表
Appleのサポートページが非常にわかりにくいため、管理人がAppleサポートページの情報を基に独自にまとめた「Macの4K HDRコンテンツ対応表」を掲載する。
HDR | 4K HDR | |
---|---|---|
Mac mini + 外付けモニター | YES | N/A |
MBP 2018以降 内蔵モニター | YES | N/A |
MBA 2018以降 内蔵モニター | YES | N/A |
MBA 2018以降 + 外付けモニター (DP接続) | YES | N/A |
MBA 2018以降 + 外付けモニター (HDMI接続) | YES | N/A (Apple Silicon搭載MBA 2020では対応) |
MBP 2018以降 + 外付けモニター (HDMI接続) | YES | N/A |
MBP 2018以降 + 外付けモニター (DP接続) | YES | YES |
Mac Pro + 外付けモニター | YES | YES |
iMac 2020 内蔵モニター | YES | YES |
iMac 2020 + 外付けモニター | YES | YES |
iMac Pro 内蔵モニター | YES | YES |
iMac Pro + 外付けモニター | YES | YES |
表でまとめても依然としてややこしいが、少しでもMacでの4K HDR対応状況の理解が進めば幸いだ。
管理人の環境

今回TVアプリで4K HDR映画の再生を試した環境は以下の通り。
- Mac mini 2018+Blackmagic eGPU(外付けグラフィックスボード)
- Blackmagic eGPUのThunderbolt 3端子からUSB-C>DisplayPort変換ケーブルで4K HDRモニター(LG 27UK650-W)に接続
- macOS Catalina 10.15.4
- 擬似解像度は3008x1692
なお、使用しているモニターのDisplayPortは1.2であるが、DisplayPort 1.2はHDRの伝送に対応していないにも関わらずmacOS Catalina 10.15.4をインストールした環境ではHDRが自動で有効になっていた。
本来DisplayPortは1.4からHDRに対応したので1.2はHDRは出力できないはずなのだ。
これについて海外のコミュニティでは「LGの4K HDRモニターはソフトウェア処理に対応している」、「DisplayPort 1.2と謳っているが実際のところ内部の実装はDisplayPort 1.4である」という様々な憶測があり情報が錯綜していた。
ただ、更に調べてみたところDisplayPort 1.2であってもモニターがRGBフルレンジではない場合、1.4でなくてもいわゆる「なんちゃってHDR」なら対応しているようだ。
なお、HDMI 2.0でもテストしたが少なくとも「Mac mini+Blackmagic eGPU」という環境ではHDMI 2.0で接続している状態で「ハイダイナミックレンジ」をオンにすると画面が白っぽくなり、モニターもHDRモードに移行せず、おかしな挙動を示したためeGPUを使用している場合はUSB-C>DisplayPort変換ケーブルやモニターにUSB-CポートがあるのならUSB-Cポートで接続した方がいいだろう。
ディスプレイの設定で「ハイダナミックレンジ」をオンにする

冒頭で書いた通りmacOS Catalina 10.15.4からはシステム環境設定の「ディスプレイ」の項目にモニターがHDRに対応していれば「ハイダイナミックレンジ」というオプションが追加される。
この設定はデフォルトでオンになっていると思うが念のためHDRコンテンツを見るならこの設定を確認しておこう。
HDRを有効にした状態のmacOSの画面の見え方


HDRがオンの状態の場合、4K HDRモニターなどがHDRモードに移行するがmacOSの画面を見てみると様々なアイコンやUIが異常に色鮮やかになって通常の見た目とは大きく異なる。
正直Photoshopや写真・動画編集をする場合は色再現性に難があるため、何らかの作業をする時はHDRをオフにし、HDRコンテンツを視聴するときだけHDRを有効にする方法を取った方がいいだろう。
また、海外コミュニティではHDRを有効にすると画面が青味がかると報告されているが、Apple TV 4KでHDRを有効にした場合も同様に青味がかっているため、これはLGのモニタ側に原因があるように思う。
4K HDR対応映画を用意

4K HDRモニターがあっても4K HDRのコンテンツがなければ始まらないのでまずは4K HDR対応のTVアプリの映画を用意した。
今回テストに使用した映画は「ダンケルク」。
画面のコントラストや明暗がはっきりしており、人物のアップのショットも多いため4K HDRの画質を確認する上でベストな映画だと判断した。
なお、映画が4K対応かどうかはTVアプリの映画の詳細画面を開き画面下部に「4K」という表示があるかで判断できる。
また、HDR・Dolby Visionという表示があればHDR 10やDolby Visionにも対応している(ただ、前述の通り外付け4K HDRモニターの場合はPro Display XDR以外はたとえモニターがDolby Visionに対応していてもHDR 10でしか再生できない)。
なお「Dolby Vision」という表示しかない映画もあるが、その場合はHDR 10で再生される。
TVアプリの設定をする

TVアプリの「環境設定」の「再生タブ」で画質などを設定できるため、4K HDR映画を鑑賞する前にTVアプリの設定も確認しておこう。
今回は上記画像の設定でテストしてみた。
なお「利用可能な場合はHDRをダウンロード」にチェックを付けておけば映画をダウンロードした際、その映画がHDR対応ならばHDR版の映画がダウンロードされる。
早速4K HDR映画をTVアプリで再生

早速4K HDR映画を再生してみた。
なお、冒頭でも書いた通り今回は「Mac miniと外付け4K HDRモニター」の組み合わせなのでAppleサポートの情報が正しいならば4K HDR映画を再生してもHDRは有効だが解像度は最大1080pまでになる。
ただ、今回はストリーミングでTVアプリの映画を再生したのだが明らかに1080p映画より画質がいい。
これはeGPUを使用せず、Mac miniと4K HDRモニターをHDMI 2.0で直接接続した場合も同様である。
映画のスクリーンショットを載せるわけにはいかないので伝えるのは難しいのだが、1080pのみ対応の映画と比べて画質は格段に上であり「4Kだ」と言われたら信じてしまいそうなほどなのだ。
Appleサポートのページにある「Mac miniと外付け4K HDRモニターの組み合わせの場合は1080pまで」という情報には首を傾げてしまう。
なお、HDRに関しては画面の輝度が明らかに上がるため確かにHDRが有効になっていると実感できたものの、Apple TV 4Kで再生した場合と比べると少々輝度が劣るように思えた。
ちなみに4K HDRコンテンツを確実に再生できる「Mac Pro 2019 + 外付け4K HDRモニター・Pro Display XDR」やiMac Proであっても4K映画の再生はストリーミングのみであり、これはMacに限らずWindowsでも同様でTVアプリやNetflixなど全てのプラットフォームの4K HDR映画はストリーミングのみの対応となる。
ただし、HDRに関してはダウンロードした映画であってもHDR画質で再生が可能だ。
まとめ
Appleサポートの情報が錯綜しているため、macOS Catalinaでの4K HDR映画再生は非常にややこしいことになっており、本記事の内容も少々ややこしい雑然とした記事になってしまった。
Appleサポートの情報を交えて今回テストした結果をまとめると以下のようになる。
- 映画をダウンロードした場合はどのMac・モニターであっても解像度は1080p(フルHD)までで4Kでは見れない
- HDRに関してはダウンロードしてもHDR画質で視聴可能
- 確実に4K HDRコンテンツを見れるのは「Mac Pro 2019 + 外付け4K HDRモニターまたはPro Display XDR」の組み合わせとiMac 2020、iMac Pro
- 「Mac miniと外付け4K HDRモニター」の組み合わせでの4K HDRコンテンツは1080pより明らかに解像度は上
- HDRに関しては「Mac miniと外付け4K HDRモニター」の組み合わせ、及びMacBook Pro 2018以降の内蔵ディスプレイで確実に鑑賞可能
いずれにしろ、macOS Catalinaで4K HDRコンテンツの鑑賞が可能というのは確かであるが「ややこしい上に条件が非常に厳しい」と言える。
ここまでややこしいのであれば普通にApple TV 4Kを購入してそちらに4K HDRモニターを接続して鑑賞した方がいいだろう。