
Pro Display XDRの登場によりMacの外付けモニター環境は4K/5K/6Kと一通りの高解像度が揃った印象があるが、具体的に4K/5K/6KモニターではどれくらいのVRAM(ビデオメモリ)が必要なのか、まとめてみる。
なおVRAMにもGDDRやHBMなど、それぞれ異なる規格が存在するがここではあくまで”容量”にフォーカスする。
INDEX
そもそもVRAMとは?

VRAM(ビデオメモリー)とは簡単に言ってしまえばGPU用に用意されたRAM(メモリ)である。
通常のRAM(メモリ)が、アプリケーションやOSのデータを格納しているのに対して、VRAM(ビデオメモリ)はアプリケーションやOSの画像・映像・透明度などの描画情報を格納する他、ウィンドウシステムや3Dのレンダリングに用いる素材のバッファリングも行う。
当然モニターの解像度が上がれば、その分多くの描画情報を格納する必要があり、VRAMの必要容量も増える。
また、動画編集やゲームでは一般的なアプリケーションやOSの描画より更に多くのVRAMを必要とする。
VRAMが少ないと、アプリケーションやOSの描画情報を処理しきれなくなり、代わりに通常のシステムメモリを使用したり、アプリケーションやOSの描画情報が書き換わる度にVRAMの解放・再確保といった処理が行われ、結果的にコンピュータ全体のパフォーマンスが落ちてしまう。
4Kモニターに必要なVRAM

4Kというと高解像度という印象が強いが、動画編集やゲームをしないのであれば実際にはビデオメモリは1.5〜2GB程度でも一般的なタスクは余裕だ。
現在iMac Retina 4Kに搭載されているGPUは最低ラインがRadeon Pro 555Xであるが、そのVRAMは2GBであり、少なくともAppleの考えとしては4K解像度でのVRAMの最低ラインは2GBということがわかる。
なお、iMac Retina 4Kの4Kは4096x2304というDCI-4Kと呼ばれる解像度であり、一般的な4K解像度の3840x2160よりピクセル数が多いが、AppleはDCI-4K用途でも2GBあれば十分と認識しているようだ。
また、僕はeGPUを利用するまではMac mini 2018のCPU内蔵グラフィックで4Kモニターを使用していたが、CPU内蔵グラフィックは専用のVRAMを持たず、システムメモリ1.5GBをVRAMとして使用している。
その状態でも擬似解像度を上げたり重いアプリケーションを使用しないのであれば、4K解像度の表示は特に問題はなかった。
VRAMより遥かに速度が遅いシステムメモリでも1.5GBあれば4K解像度程度なら表示や一般的なタスクは支障がない。
4K解像度をMacで利用する上では、少なくとも1.5〜2GB程度のVRAMであれば最低限のことは出来る。
複数モニターや重いアプリケーションの使用を考えても3〜4GBあれば余裕だろう。
5Kモニターに必要なVRAM

5Kモニターの解像度はiMac 5KやAppleオンラインストアで販売されているLG UltraFine 5Kモニターを基準とすると5120x2880であるが、さすがに5KとなるとVRAM1.5〜2GBでは足りなくなってくる。
一般的な4Kに比べて5Kのピクセル数は1470万ピクセルであり、4Kの800万ピクセルを大きく上回る。
iMac 5Kは2014年に初めてリリースされ、2015年に至るまで最低ラインのGPUの搭載メモリを2GBとしていたが、当初から一部のユーザーの間で「iMac 5Kに搭載されているVRAMは少なすぎる」という声があった。
Appleがそれらの声に耳を貸したのかはわからないが、2017年から販売が開始されたiMac 5Kは最低ラインのGPUの搭載メモリを4GBに転換した。
現在販売されている全てのiMac 5Kはどんなに安い構成でもVRAMは最低4GB搭載している。
このことから考えても、5K解像度を利用するには最低でも4GB程度が必要と考えることが出来るだろう。
参考までに、僕は昨年までiMac 5K 2015 Radeon M390 2GBを使用していたが、搭載VRAMが2GBのためVRAM使用量もカツカツで、PhotoshopやLightroomなどの動作もそれなりに重く、ヘビーな作業では悲鳴を上げていた。
ゲームやヘビーなアプリケーションの使用、複数モニターを考慮すると、場合によっては6〜8GB程度が必要になってくるかもしれない。
結論としては最低ラインは4GB、複数モニター環境やヘビーな作業の場合は6〜8GBを考慮した方がいいだろう。
6Kモニターに必要なVRAM

恐らく世界初の民生用6KモニターであるPro Display XDRの解像度は6016x3384に達し、ピクセル数は2040万ピクセルである。
ここまで来ると高解像度と言われている4Kモニターのピクセル数が可愛く思えてくるほどだ。
当然のことながら2040万ピクセルを処理するには今までより更に多くのVRAMが必要とされる。
といってもPro Display XDRと組み合わせて使用することを考慮しているであろう新型Mac Proの最も廉価な構成のGPUはRadeon Pro 580Xであり、そのVRAMは8GBなので、Appleとしては8GBが6Kモニターを利用する上での最低ラインと考えているようだ。
実際、8GBのVRAMというのは一般的なグラフィックスカードと比べても割と容量が大きい部類に入るので、8GBあれば6Kモニターであっても一般的なタスクやある程度重いアプリケーションでも利用可能だろう。
とはいえ、動画編集やゲームなどを考慮すると4Kとは比べものにならないほどの容量のVRAMが必要になってくるはずだ。
新型Mac Proも最低ラインはRadeon Pro 580Xであるが、一つ上の構成だとRadeon Pro Vega IIになり、そのVRAMは32GBになる。
6Kモニターでバリバリ動画編集やゲーム、プロ向けアプリケーションを使ったり、複数モニターの利用を考慮した環境ではそれだけの性能とVRAMが必要であるということの表れだろう。
結論として、6Kモニターに必要なVRAMの最低ラインは8GBであるものの、複数モニターや用途によっては16〜32GB程度まで必要になってくると言えると思う。
自分のMacのVRAM使用量をチェックする方法
通常macOSでは使用VRAMをチェックする機能は用意されておらず、サードパティーのアプリを利用する必要がある。
僕が使用しているのはiStat Menusという有料ソフトウェアであり、CPUやGPUを含めた各種センサーの温度、CPU・GPU使用率をチェックでき、VRAMの使用量ももちろん表示可能だ。
ただ、iStat MenusはVRAMの使用量が高めに出る傾向があるため、その値が本当に正しいのかは確証がない。

上記画像の”メモリ”という項目のグラフがVRAM使用量であるが、4KモニターでありながらかなりのVRAMを消費している。
断言は出来ないが、もしかしたらmacOSのRetina(擬似解像度)によってVRAM使用量が変わっている可能性がある。
僕はBlackmagic eGPU Radeon Pro 580 8GBを擬似解像度3008x1692で使用しているが、擬似解像度が高いためにVRAM使用量も高くなっているのかもしれない。
まとめ
上記でまとめた内容は、4KモニターやiMac 5Kを使用した僕の実体験と推測両方が混ざっているので根拠に欠ける推論であるかもしれないが、少なくとも4KモニターではVRAMは最低1.5GB程度あれば表示が可能であり、4GBあれば4Kモニターにおいては全く問題なく、5Kでも最低4GBあれば基本的なタスクは大丈夫ということは確かだ。
macOSはOS自体のUIもリッチであり、フォントのレンダリングにも負荷がかかりやすいOSであるため、必然的にVRAM使用量がWindowsなどと比べて高くなる傾向があるので、4K/5K/6Kモニターを導入する場合は事前に自分が使用しているMacのVRAMを考慮しよう。
幸い、近年eGPUが普及してきており、トラブルなどに目をつぶれば簡単に大容量のVRAMを搭載したeGPUを導入することが可能なので、モニターの解像度に合わせてeGPUを導入するのもありだろう。