3D Touchが普及しなかった理由

昨年に発表されたiPhone XRでは部品コストの削減により”3D Touch”が採用されず、代わりにTaptic Engineのみを搭載して”Haptic Touch”と称する画面長押しによる操作で3D Touchを代用した。

最近の次世代iPhoneの噂では複数の有力情報として、2019年版のiPhoneは全モデルにおいて3D Touchが廃止されると囁かれている。

まだ噂の段階ではあるが、iPhone XRで採用されなかった時点でAppleとしては3D Touchを以前ほど重要視しなくなっていると思われる。

実際のところ、僕も3D Touchはキーボードの押し込みによるカーソル操作くらいにしか使ったことがなく、そのカーソル操作もiOS 12からはキーボードの”スペースバー”や”空白”をホールドすることによって代用可能なので、僕の中での3D Touchはもはや無用の長物となっている。

3D TouchがiPhone 6sに搭載されてから間もなく4年、なぜ3D Touchは一向に普及せず、そのままその役目を終えようとしているのか。

個人的に3D Touchの問題点を考えてみた。

どこを押したらアクティブになるのか分からない

これはよく言われている問題で、3D Touchは画面の押し込み(圧力)を利用するのだが、通常のタッチと違ってどこを押したら3D Touchが有効なのか、実際に押し込みをしないとわからないという点。

通常のタッチ操作なら「ここにアイコンがあるからこれをタップする」「ここにリンクがあるからこれをタップしたらリンクが開く」といったように視覚的に情報が提示されるのに対して、3D Touchはそうした視覚に訴える情報がないのだ。

結果的にユーザーは実際に押し込むまで動作するかわからない曖昧な操作方法より、確実なタッチ操作を優先してしまう。

画面を押し込むというのは心理的・生理的な抵抗がある

これはあくまで僕個人の意見だが、3D Touchの押し込み操作には心理的・生理的な抵抗がある。

なぜかというと3D Touchはその名前の通り、3次元的な操作方法であり、今までのタッチ操作のX,Y軸に加えて押し込みによる”Z軸の操作”が必要になる。

このZ軸の操作が、想像以上に心理的・生理的に違和感があるのだ。

タッチパネルが普及した現代においても、”Z軸方向に指を強く押し込む”という動作は3D Touch以外には少数のAndroid端末が独自に採用しているだけで、日常生活で使用する機会がない。

そのため一度タッチパネルに慣れたユーザーはこのZ軸方向への押し込みに違和感と抵抗感が生じるのだ。

ただ、この違和感と抵抗感は同様の操作を要求するMacBookシリーズやMagic Trackpad 2の感圧トラックパッドでは生じない。

これは”トラックパッドは元々押すものである”という長年MacやノートPCなどを使っている人からは当たり前の動作であるために、iPhoneのような違和感や抵抗感が生じにくいのだと思われる。

またiPhoneは主に縦に持って使用するために、画面を押し込む操作により端末を持つ手のグリップ感が犠牲になる、というのも僕が感じた問題点だ。

これも先述の通りトラックパッドでは元々水平に置いた状態で使用するため、こうした問題は生じない。

3D Touchが役立つ操作が提供されなかった

3D TouchがiPhone 6sの新機能として紹介された時、ソフトウェアエンジニアリング上級副社長のクレイグ・フェデリギが3D Touchの便利さについて「こんなことも簡単に出来ますよ」と実演してみせた。

しかし、最終的には3D Touchで出来ることはアプリアイコンやコントロールセンターの長押しによるクイックアクションと、キーボードのカーソル移動、アプリ内のリンク長押しによるプレビュー程度しか役立つ機能が提供されなかった。

今ではほとんどのアプリが3D Touchをサポートしており、LINEなどでもトーク一覧画面から3D Touchによって既読をつけないで新着トークを見る、ということも出来たりするが、基盤である肝心のiOSには魅力的な3D Touchによる操作を提供してこなかったため、結果としてユーザーの3D Touchへの関心が薄れていった。

仮にiOSで、3D Touchを使用することで画期的な機能や操作を提供出来ていたら、画面押し込みへの違和感の問題などを乗り越えて普及するチャンスもあったかもしれない。

まとめ

上記はあくまで僕個人の感想ではあるが、実際に3D Touchをバリバリ使っているという人はほとんどいないだろう。

3D Touchの登場から間もなく4年。

噂ではあるとしても、2019年版iPhoneから3D Touchがなくなるのは大いにあり得ると思っている。

AppleとしてはiPhoneのタッチという概念で既存のスマートデバイスなどに新しい旋風を巻き起こしたから、今度は3D Touchで新たな操作方法を開拓したかったのだろうが、その試みは失敗したと思う。

ただ、iPhoneやMacBookシリーズのトラックパッド、Magic Trackpad 2で採用されているTpatic Engineによる触覚フィードバックは画期的な物だと感じている。

操作に応じて端末が僅かに振動するというのは心地良いし、触覚に訴えることによってタッチデバイスの弱点である「操作した感覚がない」という問題を解決している。

3D Touchに付随する形で生まれたTaptic Engineの方が画期的だったというのは皮肉な話だが、仮に3D TouchがiPhoneから廃止されてもTaptic Engineだけは、iPhone XRにTaptic Engineが残されたことからも、この先も採用される可能性が高い。

3D Touchは失敗した(と僕は思っている)がTaptic Engineを軸に新たにブレイクスルーとなるような操作方法をAppleが開発してくれることを願ってやまない。