Taptic Engineの革新性

近年のiPhoneを代表するApple製品において最も革新的な発明であると僕が思っているのが「Taptic Engine」である。

今回は僕個人の意見ではあるが、いかにこの「Taptic Engine」が革新的であるかを説明したいと思う。

Taptic Engineの登場

2015年9月9日 Apple基調講演

Taptic Engineが初めて登場したのは2015年9月、iPhone 6sの発表会である。

登壇したフィル・シラーが「マルチタッチに続く次世代の新しいエクスペリエンスを提供する」と大々的に3D Touchを発表し、それに付随する形でユーザに3D Touchがアクティブになったことを知らせるためのアクチュエータとして搭載されたのがTaptic Engineだ。

Taptic Engineは一般的には「触覚フィードバック」に属する装置で、ユーザーの操作に応じてTaptic Engineが動作することで端末が僅かに振動し、操作の実行をユーザーの触覚を通じて知らせる。

なお、結局3D Touch自体は「次世代の新しいエクスペリエンス」にはならずにその役目を終えようとしている。

3D Touchが廃れてもTaptic Engineの重要性は変わらない

3D Touch自体は2019年のiPhoneからは搭載されなくなると噂されているし、現にiPhone XRでは3D Touchは搭載されず、Haptic Touchと称したTaptic Engineの振動のみで3D Touchの機能を代替している。

僕自身も3D Touchの機能は数えるほどしか使ったことがなく、欠かせない機能とはとても言えず、恐らく多くの人も3D Touchの恩恵というとソフトウェアキーボードを強く押してカーソル移動をすることくらいしか思い浮かばないのではないだろうか。

こうした廃れゆく3D Touchを廃しながらTaptic EngineをiPhone XRに搭載したのは、Apple自身もTaptic Engineがフィードバック装置として重要であると認識していることの表れだろう。

Taptic EngineはもはやiPhoneに留まらず、MacBookシリーズのトラックパッド、周辺機器であるMagic Trackpad 2、Apple Watchなど様々な製品に搭載され、それぞれの製品において重要な役割を担っている。

Taptic Engineがもたらす第三の感覚

スマートデバイスやトラックパッドのタッチパネルを主軸としたUIには、直感的な操作によるトレードオフとして「操作の実行が完了したのかがわかりにくい」という問題がある。

スマートデバイスの多くはほぼタッチパネルのみでの操作を想定しているため、従来のデバイスのような「ボタンを押した感覚」が存在しない。

ガラケーなどであれば操作の実行はボタンを押した指先の感覚で理解することが出来るが、スマートデバイスではそうはいかない。

スマホなどでタッチによる操作を実行しても、本当にタッチが有効であったのかが直感的には理解しにくく、ユーザーはタッチによる操作の実行後は画面を注視してその操作が実際に実行されたのかを確認する必要がある。

これに「振動」というTaptic Engineの特性が加わると、ユーザーは触覚を通じてタッチ操作の実行を瞬時に理解することが可能になる。

たとばiPhoneのTwitterアプリで画面を下にスワイプすると更新が実行されるが、Taptic Engineが動作することで「スワイプしてタイムラインの更新が実行された」ということを触覚を通じてユーザーに知らせている。

また、プルダウンメニューの操作においてもTaptic Engineは有効に働いており、プルダウンメニューをスワイプするとまるで「ダイヤルを回している」ような感覚を触覚を通じて伝えており、現実世界に近いフィーリングを実現している。

試しにiPhoneの設定から触覚フィードバックをオフにすると、いかにTaptic Engineの役割が想像以上に大きいかを実感できると思う。

多くの人は触覚フィードバックをオフにするとアプリの操作に「物足りなさ」を感じるはずだ。

これはいかにTaptic Engineが気づかぬ間にタッチ操作において重要な役割を担っているかの証左と言えると思う。

ハンデを背負う人へのメリット

また、例えば視覚や聴覚に障碍を持っている人であっても触覚は機能している方が多いため、そういった障碍者へのメリットも大きい。

今までは目で見るか、アクセシビリティ設定をして耳で音を聞くといった視覚・聴覚のみに頼っていたタッチ操作に、触覚という新たな第三の感覚が加わることでスマートデバイスやコンピュータの操作はハンデを背負う人にとっても快適なものになる。

この感覚は駅のホームなどに設置されている点字ブロックに近い。

極端なことを言えば点字ブロックもある種の触覚フィードバックであり、足の裏に凸凹の感覚を伝えることで視覚に障碍があっても足の裏から伝えられるフィードバックにより、視覚障碍者は危険を察知することができる。

これからのTaptic Engine

今後Taptic Engineは進化することはあれど、先に挙げた製品から廃止されることは恐らくなく、搭載製品はこれからも拡大していくはずだ。

3D Touchは失敗したと言えるが、それに付随する形で登場したTaptic Engineは僕が思うに「マルチタッチ」以来Appleが開発したギミックの中では最も革新に満ちた装置・機能であると思っている。

もちろん、こうした触覚フィードバックは既にいくつかのAndroidスマートフォンでも実現されているが、Android CentralというAndroid寄りのWebマガジンでさえも、2018年時点で「Androidスマートフォンの触覚フィードバックはTaptic Engineに及ばない」と評している。

まとめ

私見ではあるが、Taptic Engineの革新性について僕が思うところをまとめた。

3D Touchに付随する形で登場したTaptic Engineの方が3D Touchより革新的だったというのは皮肉だが、僕はこうした「触覚フィードバック」は優れたUIやユーザーエクスペリエンスを実現する上で重要だと認識している。

以前落として割れたiPhone Xを修理に出している間、iPhone SEを使っていたのだがiPhone SEにはTaptic Engineがなく「Taptic Engineがないだけでここまで使い心地が違うのか」と驚いた。

もちろん、中にはTaptic Engineの挙動を嫌って設定から触覚フィードバックをオフにしている人もいると思うが、人によって好みの差はあったとしてもTaptic Engineは今後も重要な装置であり続けると思っている。