Apple TV+はこけるのではないか

Appleは3月25日(米国時間)にApple Special EventでApple TV+というサービスを発表し、新たに動画配信事業への参入を発表した。

日本国内でのサービス開始はこの秋を予定している。

Appleの動画配信というと既にiTunesで映画などを販売しているが、Apple TV+はサブスクリション型の動画ストリーミングサービスとなり、iTunesなどの買い切り型動画配信とは異なる。

Apple TV+以外にも様々な発表が行われたのだが、やはり一番注目されたのはApple TV+だろう。

先日のiOSのアップデート(iOS 12.3)でも”ビデオアプリ””TVアプリ”に刷新されたため、AppleもApple TV+のサービス開始に向けて本腰を入れてきている。

しかし、個人的にAppleが動画配信サービスで成功するのかどうかは懐疑的な見方を持っている。

Apple TV+がこける可能性が大きい理由

NetflixやHulu、Amazon Primeなどの先駆者の存在

動画配信サービスというと、2019年の時点において最も勢いがあるのはNetflixだろう。

Netflixの全世界会員数は2017年に1億人を突破し、値上げなどもあったが、その後も会員数は増え続けている。

Amazon PrimeについてもNetflixが1億人を突破した翌年2018年に同じく会員数1億人を達成している。

とはいえAmazon Primeは動画配信だけではなく、配送やTwtich Primeなどの恩恵もあるため、動画配信だけで勝負をしているわけではないが。

Huluについては会員数は3番手になるが、5400万人の総会員数を持つ。

これら3社がしのぎを削っている事業にAppleが今更殴り込んだところで勝てるとは到底思えないのだ。

ただ、Apple Musicも開始当初は同じ音楽聴き放題サービスのSpotifyに勝てないのではないかという予測があったが、結果的に米国内ではApple Musicの会員数はSpotifyを超えたので、何があるかはわからない。

ただ、音楽配信事業と比べると動画配信事業はライバルが多く、Apple TVは開始当初は苦戦するはずだ。

長期的な目で見れば動画配信サービスの4番手として、同じ土俵に立てる可能性もあるが、そのためには多額な投資と豊富なラインナップが必要になる。

Appleの厳格な審査

Appleはプライバシーや性的・暴力的な表現に極めて厳しく、App Storeにおいても性的・暴力的表現が存在するゲームやアプリは認められず、デベロッパーはAppleの審査に適合するようにそういった際どい表現の修正をせざるを得ないのが現状だ。

そういった姿勢は動画配信サービスでも変わらないだろう。

実際に、これはApple TV+発表前の記事ではあるが、こんなことがあった。

ネタ元のWall Street Journalは、Apple初のオリジナルドラマ『Vital Signs』が制作打ち切りになった理由を、ティム・クックCEOの独自判断だと指摘。なんでも、ドラマの内容がヒップホップ界の重鎮Dr. Dreの半生を描いたものだったそうですが、試写を見たクックCEOは「バイオレンスすぎる」と顔をしかめたのだそう。

GIZMODO

このようにAppleは動画配信サービスにおいてもAppleというブランドのクリーンさを保つ姿勢のようで、Apple TV+においてもオリジナルコンテンツは過度の性的・暴力的表現がある作品は配信されない可能性が高い。

iPhoneなどのハードウェアやApple Musicなどのような音楽配信とは違い、映像エンターテイメント作品では性的・暴力的な表現もその作品の魅力の一つして重要な役割を果たしていることが多い。

そういった性的・暴力的な表現の過度な規制は結果的にコンテンツのバラエティーを狭めてしまうことになり、ライバルに遅れを取ることに繋がる。

Apple TV+は基本的にはApple製端末向け

Apple TV+のアプリはApple製端末以外にもサムスン、Amazon Fire TV、LG、Roku、ソニー、VIZIOなどの主要なテレビに搭載される予定であるが、サードパーティーのテレビでも利用が可能とはいえ、基本的にはApple製端末向けのサービスという印象を僕は持っている。

Android端末向けにApple TV+アプリが配信されるのかは現時点では情報が見つからず不明だが、いずれにしろApple TV+の利用者はほとんどがiPhoneなどのApple製端末を持っている人に限られてくるだろう。

しかしiPhoneの世界的なシェアは年々低下傾向にあり、そういった中で基本的にはApple製端末向けとなるApple TV+は端末のシェアに依存し、結果的に利用者が増えないということが考えられる。

NeflixやAmazon Prime、Huluはそもそも端末に依存したサービスではなく、テレビはもちろんセットアップボックス、PC、Mac、iOS/Androidアプリなど様々なデバイス・OSで利用が可能だ。

こういった点でもApple TV+の雲行きは怪しいと感じている。

総評

色々と否定的なことを書いてきたが、もちろん未来のことは誰にもわからない。

Apple Musicのサービス開始当初はライブラリの管理方法に問題があり、使いにくかったり「Spotifyに太刀打ちできない」とする予測もあったが、数年経ち相応の成功を果たしている。

同様にApple TV+もコンテンツ次第では動画配信サービスの4番手として成功する可能性もある。

だが、そのためにはコンテンツの豊富さ、厳格なApple独自の審査、対応端末など、Apple Musicとは比べ物にならないくらいの大きなハードルをクリアしなければならず、現状の動画配信業界の動向を見るに、Apple TV+は苦戦する可能性が高い。

AppleはiPhoneに代表されるハードウェアの売り上げが低迷しているために、今度はハードではなくソフト(サービス)で勝負をしたいのだろうが、そのためにはAppleが今まで培ってきたものや固定観念をある程度捨てる必要があるのではないか。

2019年になってからサービスで勝負しようとするAppleの判断は、偉そうな言い方になってしまうが”遅すぎる”と感じている。